近況
2013年12月号

「福島分局」の1週間

高田 光康

「福島分局」って?

資源循環・廃棄物研究センター(以下「循環センター」)では、2012年4月から、東日本大震災により生じた災害廃棄物問題、放射能汚染廃棄物問題の最前線である環境省福島環境再生事務所に職員を常駐して、現場で発生する様々な技術的課題の克服に我々の研究内容を活かすことができるよう活動を行っています。この福島常駐チームを「福島分局」と呼んでおり、現在、客員研究員1名を含む3名で業務を行っています。

ここは、行政の最前線である環境省の出先機関のフロア内に机を置いての業務で、パソコンや実験装置に向かって仕事をしているつくばの研究所とは全く雰囲気の違う職場です。日々現場が動いている実感を持ちながら、いかにすれば我々研究機関が社会に対して有効な役割を果たしていくことができるか、常に答えを求められていることを感じながら毎日を過ごしています。

ある1週間の活動

ここでは、福島分局の業務・活動内容について、2013年11月のある1週間を例に紹介します。

<現地調査・現場活動>

  • 福島県A市の災害廃棄物仮置場内で実施中の災害廃棄物破砕選別技術の高度化に関する実証試験の状況確認(月・火)
  • 宮城県B市の災害廃棄物仮設焼却炉の解体処理の状況調査(火・金)

<現場調査実施にむけた協議・調整>

  • 福島県C町で実施予定の廃棄物試料の放射線測定技術に関する実証試験にかかる環境省への説明と協議(月)
  • 福島県D市の一般廃棄物焼却施設で実施予定の放射性物質の挙動調査にかかる市当局への説明と協議(月)

<情報発信・情報収集>

  • 水環境における放射能の動態に関する情報収集のため学会の講演会に参加(火)
  • 東京で開催された環境研究シンポジウムにおいて福島における循環センターの活動についてポスター発表(水)
  • つくばの研究所本構で災害廃棄物処理に係る人材育成ワークショップの企画に関する会議に参加(木)

このように、福島県内を中心とした多くの現場において、循環センターのメンバーと連携しながら、調査実施に関する連絡調整を行うとともに実際の調査にも参加しています。また、福島の現地にいてこそ得られる各種の情報を循環センターメンバーと共有したり、活動内容を外部に発信することも重要な役割の一つです。

災害に備える

東日本大震災の発生から3年近くの時間が経過する中、原発事故の影響もあり、なお福島では元の家に帰還できない方が多く、除染や災害廃棄物の処理も未だ道半ばです。一方で、2013年の日本では伊豆大島の大規模な土砂災害をはじめ、自然災害が多く発生しました。また、アジアに目を向けてもフィリピンでは巨大台風の襲来による大規模な災害が起きました。今後も自然災害は時に大量の災害廃棄物を発生させ、その処理には多大な時間と労力を必要とする場合があります。福島分局では、東日本大震災の被災地での課題解決を進めるとともに、そこで得られた知見をもとに、災害発生時にその被害と環境影響を最小化することができるよう、現場調査による災害廃棄物に関するデータ収集ととりまとめ、調査結果やデータ解析結果についての情報発信など日々の活動を続けています。

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