循環・廃棄物のけんきゅう
2015年4月号

多機能製品の普及と省資源化

小口 正弘

多機能製品

私たちの身の回りには色々な家電製品や電子機器があります。それらの製品のおかげで私たちは快適で便利な生活を送ることができます。それにしても、最近の家電製品や電子機器にはたくさんの機能が付いていますね。中には全ての機能を使いこなせない、なんていう人もいるのではないでしょうか。イラストそのような多機能製品の例として、洗濯乾燥機、オーブンレンジ、テレビチューナー内蔵パソコン、スマートフォンなどを挙げることができます。今はほとんど見かけませんが、ラジカセやテレビデオ(知らない人も多いかも!)なども多機能製品と言えます。思えば多機能製品はだいぶ昔から存在していたのですね。

多機能製品の普及は省資源化にもつながるかもしれない

多機能製品は私たちの生活をより便利にしてくれるだけでなく、環境面でもよいことがある可能性があります。それは、多機能製品は1つの製品で複数のことができる(複数の機能を発揮できる)ため、1つの機能しか持たない単機能製品(またはより機能の数が少ない多機能製品)を置き換えることで、物質の使用量(資源の使用量と言い換えてもよいでしょう)を減らすことができるかもしれないということです。例えば、これまで洗濯機と衣類乾燥機を両方使っていたところを洗濯乾燥機に替えたとします。そうすると、洗濯機と衣類乾燥機で2台の製品を使っていたところを洗濯乾燥機という1台の製品で済ませることができます。製品の数を減らすことで製品に使われている物質量も減って省資源化にも貢献できる、という考えです。多機能製品による省スペース化のメリットと考え方は似ていますね。

しかし、多機能製品の普及は実際に省資源化につながっているでしょうか。多機能製品の登場は多機能であることを付加価値として新しい市場を開拓することもあり、それまでよりもより多くの製品を世の中に普及させることも考えられます。また、多機能製品を購入しても、それまで使っていた単機能製品もそのまま使い続けたり持ち続けたりするかもしれません。そうすると、製品レベルでは多機能製品がそれまでの複数の単機能製品より省資源であっても、社会全体としてはかえって物質の社会蓄積量(ストック)を増やしてしまうことになります。

実際にはどうだったか?

そこで私たちは、製品の機能に着目して、その機能を持つ製品が社会でどのくらい保有されているのか、多機能製品の登場によってその保有量はどう変化したのかを推計し、多機能製品の普及が物質の社会蓄積量を減らすことに貢献したのかどうかを分析してみました。

分析ではたくさんある多機能製品から洗濯乾燥機とスマートフォンを例としました。洗濯乾燥機については衣類の「洗濯機能」と「乾燥機能」、スマートフォンについては「携帯電話機能」、「(携帯できる)音楽再生機能」、「デジタルカメラ機能」をとり上げて、それぞれの機能を持つ製品の保有台数を推計しました。推計方法はそれほど難しくありません。ある機能を持つ代表的な製品、例えば、「洗濯機能」なら洗濯機と洗濯乾燥機、「音楽再生機能」ならスマートフォン、音楽再生機能付フィーチャーフォン(ガラケー)、iPodなどのデジタルオーディオプレーヤー、ポータブルCD・MDプレーヤーなどの保有台数を機能ごとに足し合わせるというものです。各製品の保有台数は、それぞれの販売台数から製品の寿命(製品が何年くらい保有されるか)をふまえて推計しました。

まず洗濯乾燥機の機能である衣類の洗濯機能と乾燥機能について見てみましょう。洗濯乾燥機や洗濯機、衣類乾燥機は世帯単位で保有されるので結果は1世帯あたりの保有台数で示しました。推計結果を見ると、洗濯乾燥機の保有台数増加に伴って乾燥機能のない洗濯機や衣類乾燥機の保有台数が減少しています(図AおよびB)。これより洗濯乾燥機は基本的には単機能の洗濯機および衣類乾燥機の代わりに普及してきたことがわかります。

なお、洗濯乾燥機の登場(2000年頃)以降、乾燥機能を持つ製品の保有台数が若干増えています(図B)。つまり、洗濯乾燥機が登場していなければ乾燥機能を持つ製品(この場合は衣類乾燥機)を持たなかったであろう一部の世帯が、洗濯乾燥機という多機能製品の登場によって乾燥機能を持つ製品(この場合は洗濯乾燥機)を保有するようになったということです。ただし、製品の重さ(カタログ値の中央値)を掛け算して物質量(物質の種類を問わない総物質量)で見てみると、乾燥機能を持つ製品の保有台数増加分を考えても、洗濯機能と乾燥機能を持つ製品による物質の社会蓄積量は減少していました。これは、洗濯乾燥機1台は洗濯機1台と衣類乾燥機1台の合計よりも総物質使用量(製品の重さ)が少なく、洗濯乾燥機が洗濯機と衣類乾燥機の両方に取って代わることによる物質の社会蓄積量の削減効果が大きいためです。このように、洗濯乾燥機という多機能製品の普及は生活を便利にするだけでなく、物質の社会蓄積量削減にも貢献したと考えられました。

図 洗濯機能,乾燥機能を持つ製品の保有台数推計結果図拡大
図 洗濯機能,乾燥機能を持つ製品の保有台数推計結果
(A:洗濯機能、B:衣類乾燥機能)

次にスマートフォンの携帯電話機能、音楽再生機能、デジタルカメラ機能の結果について見てみましょう。これらの製品は個人単位で保有されることが多いので結果は1人あたりの保有台数で示しました。携帯電話機能の推計結果(図C)を見ると、スマートフォンはほぼ完全にフィーチャーフォンの代わりに普及してきたと考えられます。しかし、音楽再生機能(図D)とデジタルカメラ機能(図E)の結果を見てみると、スマートフォンが普及しても、デジタルオーディオプレーヤーやデジタルカメラの保有台数はほとんど減っていません。すなわち、社会全体の傾向として、消費者はスマートフォンを購入してもデジタルオーディオプレーヤーやデジタルカメラを保有することをやめていないということになります。また、スマートフォンや音楽再生機能・デジタルカメラ機能付フィーチャーフォンの普及によって、音楽再生機能やデジタルカメラ機能を持つ製品の台数は急激に増えています。このことは、多機能製品がこれらの機能の普及を促し、新たな市場を開拓したと言えるでしょう。

このことは、音楽再生機能やデジタルカメラ機能がよりいつでも使えるようになったという意味で消費者にとってはよいことかもしれません。しかし、カタログ値によればスマートフォンの重量は音楽再生機能やカメラ機能がないフィーチャーフォンに比べて重くなっている(より多くの物質を使用している)ようです。この物質使用量の増加が機能の追加によるものであるかなどより詳細な情報を整理しなければなりませんが、スマートフォンという多機能製品の普及は物質使用量の面から見ればマイナスの方向に寄与している可能性もあると考えられました。

図拡大
図 携帯電話機能、音楽再生機能、デジタルカメラ機能を持つ製品の保有台数推計結果
(C:携帯電話機能、D:音楽再生機能、E:デジタルカメラ機能)

※ フィーチャーフォン(音楽再生機能付)は音楽再生機能を持つ大容量のメモリ内蔵・外部メモリカード対応機種、フィーチャーフォン(カメラ機能付)は画素数500メガピクセル以上のカメラ機能を持つ機種として計算。

おわりに

私たちが多機能製品を買うのはより便利な生活を得るためであって、きっと省資源化のためではないでしょう。その意味では、多機能製品の普及によって私たちの生活が便利になっていれば、それが物質使用量の増加に結びついていてもよいのかもしれません。ただし、多機能製品を好んで購入した消費者が全ての機能を必ずしも活用しているとは限りません。実際に、スマートフォンユーザーの30%が音楽再生機能を使用しておらず、17%がカメラ機能を使用していないというアンケート結果もあり1)、一部のスマートフォンに搭載されている音楽再生機能やカメラ機能は結果的に不要な機能を提供していると考えることもできます。したがって、多機能製品の普及によって本当に私たちの生活が便利になっているのか、すなわち、製品に搭載された機能とそのために使用された物質は有効に活用されているのか、これをふまえて物質使用状況の評価をすることが必要でしょう。私たちは、消費者による機能の使用実態や消費者ニーズもふまえた分析を検討し、適切な多機能化と物質利用の在り方を引き続き研究していきたいと考えています。

<もっと専門的に知りたい人は>
  1. 小口正弘、田崎智宏 (2014) 多機能製品の普及による省資源化効果の推計、エコデサイン・プロダクツ&サービスシンポジウム2014予稿集、99-102
<引用文献>
  1. 一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会 (2012) 2012年度携帯電話の利用実態調査
<関連する調査・研究>
  1. 循環型社会研究プログラム研究プロジェクト 1
  2. 萌芽的な基盤研究
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