けんきゅうの現場から
2016年11月号

東南アジアにおいて正確な実験データを取得する

尾形 有香

研究を実施するにあたって、信頼性のある実験データを集め、検証し、知見を導くことが必要です。データの信頼性が低いと、誤った結論が導かれてしまうため、研究者にとって、信頼できる実験データの取得は重要です。研究で得られた知見は、新規性や科学的面白さを提供するとともに、国の制度や政策を構築する際に、強く影響を及ぼす重要な判断材料ともなります。

東南アジアの現場で研究を実施する場合、日本の研究者が長期に渡って滞在し、研究を進めるのは難しいので、現地の人に作業を頼む必要があり、信頼できる実験データを得るには工夫が必要です。まず、東南アジアの現場で研究を始めるためには、研究者のみを相手とするだけでなく、行政機関や民間企業、一般市民、時にはウェイスト・ピッカーを対象とし、現場での作業実施やデータの採取等の交渉をしなければいけない場面が多々生じます。いきなり、見ず知らずの日本人の研究者が交渉しても成立しない場合も多く、現地のキーパーソンとなる共同研究機関等の研究パートナーの力、すなわち、現地で長年をかけて築き上げた信頼関係によって、交渉が成立し、現場での研究を始めることが可能となります。

筆者らの研究グループは、当センターで設立された共同研究拠点を通じて (http://waste-management.asia/)、タイ王国の最終処分場において人工湿地の適用性試験を実施して、もうすぐ4年となります (環環2014年3月号環環2014年10月号)。本研究では、一過性の調査に留まらず、継続的な実験データに基づいた知見を導きたいため、日々、人工湿地に廃棄物埋立地浸出水を流入する運転をし、流入水・流出水の水量や水質等の実験データを取得する必要がありました。運転作業は、現地の共同研究機関の学生や最終処分場のワーカーと一緒に進めております。研究を開始した当初は、お互いの文化の違いや考え方の違いを理解できておらず、作業の依頼方法や確認方法が適切でなかったこともあり、信頼できる実験データを取得するのに苦労しました。例えば、毎日お願いしている作業を実施していなかったり、誤った作業を実施する等によって実験条件が想定と異なっていたり、記録を忘れてしまい、必要な実験データが欠損したりしました。このため、頻繁に実験データを確認し、誤りを見つけ指摘をするとともに、年に何度も現地に赴き運転作業の確認を行いました。また、確実に実施してもらえるように作業内容を改変したり、イラストを用いた説明図を作成したりと試行錯誤しました。同時に研究の目的、重要性や信頼性の高い実験データを得る意義についても何度も議論し、理解を深めていきました。このように一緒に研究を進める中で、お互いの文化や思考の理解を深めるうちに、現地のワーカーは責任感を持ち、作業の目的や意義を適切に理解した上で、イラスト的確に作業を実施し、信頼できる実験データを取得できるようになりました。

海外研究を通じて、信頼できる実験データを得るためには、作業を実施するワーカーも含めて現地のパートナーとの信頼関係を構築し、研究の目的や意義を理解し合うことが重要であることを経験しました。研究は、数値や文字などの実験データを対象とし、検証を行い知見を導きますが、その土台には、人と人とのコミニュケーション、信頼関係の構築が必要不可欠であると考えております。

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