けんきゅうの現場から
2016年11月号

最終処分場における濁り成分

竹崎 聡

濁り成分の発生場所と種類

校庭などの地面に雨が降ると、雨水が濁った状態で地表面を移動するのを見たことがあると思います。雨水は透明ですので、濁り成分の正体は、地面に含まれる小さな土の粒子になります。言い換えると、地面を少しずつ削っていることになります(これは侵食と呼ばれる現象です)。廃棄物を埋め立てた最終処分場も、最後は土砂(覆土)1)で覆いますので、校庭などと同じ現象が生じます(図1)。雨水によって沢山の土粒子が削られると覆土の厚さが減ってしまいますので、草木を植えたり、土の種類を考えたり、そうならにように対策を施します。目で見える地表面以外でも、覆土を通過している雨水(浸透水)でも、実は同様の現象が生じていて、浸透水は濁り成分を含んでいます。この濁りが長期間、継続すると、覆土の土粒子が無くなっていきますので、やはり、覆土の厚さが減ってしまい、陥没などが生じます。そのため、覆土の設置では、土粒子の流出を減らし、濁り成分が移動しないように工夫する必要があります。

図1 図1 最終処分場より流出する濁り成分

細かな土粒子の特性と対応策

写真1 写真1 覆土より流出した土粒子の状況イメージ

粘土などの細かな土粒子は、表面がマイナスに帯電しており、プラスに帯電している化学物質を吸着する特性があります2)。重金属類はプラスに帯電しており、廃棄物層内で土粒子などの濁り成分が移動すると、有害物質が移動してしまうことがあります。ダイオキシン類も濁り成分と共に移動すると言われています3)。したがって、覆土だけでなく、廃棄物層自体からの濁り成分の流出(流亡)も意識する必要があります。廃棄物層から流出する濁り成分は、排水基準を満足するように水処理施設で処理された後、河川等に放流されますが、この処理技術を導入するには初期費用も必要な上、長期間の維持費も必要となります。その改善方法として、「元を断つ」、すなわち、濁り成分の発生量そのものを削減することができれば、費用削減に寄与でき、環境上も安全な放流水になると考えています。そのためには、土や廃棄物の種類、降雨量等が濁り成分の流出に及ぼす影響を把握する必要がありますが、現状では、それらを推定する方法は確立されていません。そこで、国立環境研究所では、まず、覆土を対象として、濁り成分である土粒子の流出メカニズム、および、その流出量等を明らにする研究を行っています。覆土からの土粒子の流出は、締固めの強さや、土に含まれる粒子の大きさ、粒子の分布状態が影響することが分かってきました(写真1)。今後、処分場における濁り成分を制御できるよう、研究成果を詳細に積み上げていく予定です。

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