けんきゅうの現場から
2014年7月号

ポリチューブ製の廃棄物メタン化装置をつくろう

小林 拓朗

ポリチューブ製メタン発酵装置

本誌ではこれまでに、アジア等の途上国の農村家庭で、有機性廃棄物を原料として調理等の燃料ガスを自給するために開発された、低コスト型メタン発酵装置を紹介してきました(2012年5月号基礎講座)。こうした装置は手作りで、また電気や燃料も必要ないので、世界各地で広く取り入れられています。装置の形式には実に様々なものがありますが、中でも一番安く、簡単に作成できるのがポリチューブ製の装置です。以下では、そのポリチューブ製装置の現場での作成方法を紹介します。

ポリチューブの大きさ、基礎づくり

装置の全体像は図1のようになっています。ポリチューブとは、厚さ0.06 mm程度のポリエチレン製の筒で、底がないポリ袋のようなものです。それ自体は形状が不安定ですので、まずチューブをまるごと収めるための穴を掘ります。穴の大きさを決めるためには、発酵装置の大きさがわからなくてはいけません。例えば、毎日20 kgの牛ふんを投入するとしたら、5 m3程度の容積の装置が適しています。その装置から、夏場なら1日あたり0.5 m3程度のメタンガスが発生すると見込まれます。必要な容積やガス発生量の予測についての詳しい計算方法は、文末に挙げた参考文献を参照してください。

様々な径のポリチューブが販売されていますが、ここでは1.5 mの折径(直径として1 m)のものを使って5 m3の装置をつくるとすると、必要なポリチューブの長さは図2のようになります。チューブの両端は投入・排出管の巻きしろの分1.5 mを確保します。ポリチューブの断面積は0.79 m2ですが、ガスが貯まる空間を除いた分(約8-9割)を穴の断面積として設計します。ここでは穴の断面は幅0.8 m、深さ0.8 mとします。したがって、必要なチューブの長さは5 / (0.8 x 0.8) + 1.5 = 9.3 mです。穴の長さは5 / (0.8 x 0.8) = 7.8 mです。まずは0.8 m x 0.8 m x 7.8 mの穴を掘ります。さらに、両端の流入・排出パイプを設置するための穴を掘ります。パイプ用の穴は、パイプと同じ幅で、45°の勾配を持たせます。

図1 ポリチューブ製メタン発酵システムの全体像 図1 ポリチューブ製メタン発酵システムの全体像
図2 ポリチューブの大きさ 図2 ポリチューブの大きさ

ポリチューブの加工

ポリチューブは、強度を確保するために何枚か重ねて使う必要があります。必要な長さ、枚数のポリチューブが準備できたら、まずガス取出口を取り付けます。ポリチューブに穴を開け、図1のように穴を中心としたチューブ内外を塩ビフランジとゴムを使ってはさみ込みます。次にチューブの両端に流出・排出口用パイプを挿入し、図2に記載されている巻きしろの部分を使ってチューブをパイプに巻き付けます。さらにその上から、ゴムチューブを巻き付けます。ガスや液漏れがないように、強い力でしっかりと巻きます。ここまで完成したら、ポリチューブは穴の中に設置します。

その他部品の加工

イラスト:しげるまず、ガスを貯めておくための貯留器をつくります。貯留器は400-500リットル程度のプラスチックバケツを2つ重ねて作成します(図1)。水を張ったバケツの中に、逆さまにしたもうひとつのバケツを浮かべます。浮かべたバケツには穴を開けてガスを導くためのホースを挿入します。ガス漏れがないよう、穴とホースの隙間はパテを詰めておきましょう。バケツに張った水は、ガスを貯留するだけでなく、硫化水素を吸収する役割も兼ねています。そのため、バケツ内の水はときどき新鮮な水に入れ替える必要があります。

ガスの配管には、ホースや塩ビ管等を組み合わせて使います。ガス漏れがないように、接続部分はホースバンド等を利用してしっかり固定します。 配管は、最終的にはガス利用機器に接続されます。調理用ガス台やガソリン式発電機などが利用可能です。低圧のため日本で市販されているガス台は使用できませんので、手製のものをつくる必要があります。詳細は参考文献に記載されています。

スタートアップと原料投入

はじめに、運転スタートは暖かい時期を選びましょう。寒い時期には、微生物が十分に活性を得られないので、発酵が始まるまでに時間がかかります。原料投入を始める前に、有機物を分解し、メタンを生成する微生物群を増やしておくことが必要です。そのために、微生物源(20-50%)と水でポリチューブの中を満たします。それから、原料を1-2日分程度加えます。微生物源は、汚泥や牛ふん尿、堆肥、川・湖沼堆積物などが利用できます。この後、しばらくはガスの発生が続きます。この期間、必要な微生物群が増殖しています。1-2ヶ月程度経過してガス発生が止まってから、新たな原料を投入するようにしましょう。発酵が安定しているかどうかを判断するには、投入口付近から液を採取してpHを測定するのが有効です。中性であれば安全です。毎日決まった量の原料を加えるのが、安定運転のコツです。このようにして運転を行っていけば、毎日安定したガス量が得られます。

<もっと専門的に知りたい人は>
  1. 小林,徐ら:中国農村地域における家庭用バイオガス施設の現況,用水と廃水,53(9),707-717,2011
  2. Bui Xuan An, Preston T R et al. : The introduction of low-cost polyethylene tube biodigesters on small scale farms in Vietnam. Livestock Research for Rural Development (9) 2, 1997. (http://www.fao.org/docrep/w5256t/w5256t06.htm)
  3. Ariane van Buren : A Chinese Biogas Manual: Popularising Technology in the Countryside, 136pp. Practical Action Publishing, UK, 1998.
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