けんきゅうの現場から
2014年2月号

国際共同研究プログラムINTERFLAMEへの参画

滝上 英孝

人材交流を兼ねた国際共同研究

図1 EUマリー・キュリー人材交流プログラムのシンボルマークとINTERFLAMEのロゴマーク 図1 EUマリー・キュリー人材交流プログラムのシンボルマークとINTERFLAMEのロゴマーク

国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センターは、平成24年1月からEUの研究者・学生交流研究プログラム(マリー・キュリー人材交流プログラムと呼ばれるEU内外での人材交流を通じて相互互恵的な研究協力関係を育成し、研究の質を高めることを目的としたもの)の分担研究機関となり、ライフサイクル物質管理研究室が主担当となって平成26年末までの3年間、「INTERFLAME」という国際共同研究を行っています(図1)。INTERFLAMEとは、正式にはSynergising INTERnational Studies of Environmental Contamination with Organic FLAME Retardant Chemicals (有機難燃剤化学物質による環境汚染の国際共同研究)という名称であり、当研究室で実施してきた有機臭素系難燃剤等の残留性有機汚染物質に関するこれまでの研究成果(例えば、2006年12月18日号「ハウスダストの研究(ほこりの研究)」、2009年4月20日号「家庭製品中の難燃剤の室内環境への影響」、2012年8月号「ハウスダスト中の臭素化ダイオキシン類」、2013年3月号「ハウスダストの組成とPBDEsの粒径分布:代表的な試料を得るために」参照 )がきっかけとなり、欧州の研究者(バーミンガム大学Stuart Harrad教授)から参画要請の声を掛けていただきました。関連する研究分野を国際的に牽引するメンバーが多く入っており、異なった考え方や分析・解析手法も勉強になるため、意義があると考えて参加しています。

代表研究機関は、イギリスのバーミンガム大学(前出のHarrad教授が研究代表者)で、分担研究機関はベルギーのアントワープ大学、スウェーデンのストックホルム大学、オランダのアムステルダム自由大学、カナダのトロント大学、中国の精華大学等、全部で10機関になります。研究者や学生(大学院生)の相互研究交流が大きな目的(ノルマ)のひとつですので、22名の研究者、17名の大学院生の他機関への派遣(42件)が計画されており、研究期間の半分が終わった段階(平成25年6月末)で17件の派遣が終了しています。各機関への派遣とともに年に1回、メンバーが一堂に会しての進捗会議も実施しています。

研究内容について

INTERFLAMEが目指す研究到達目標は、製品中の化学物質としての難燃剤がどのようなメカニズムで、またどの程度(量的に)、環境を汚染しており、どの程度、人や生態系への影響を及ぼすのかを追究することにあります。また、対策を行うことで図られる影響の低減をモニタリングすることにあります。

図2 臭素系難燃剤を含有するプラスチック粒子片の顕微鏡写真と微小部蛍光X線分析による臭素の同定画像 図2 臭素系難燃剤を含有するプラスチック粒子片の顕微鏡写真と微小部蛍光X線分析による臭素の同定画像

研究を構成するサブテーマは8つあり、(1) 難燃剤使用量の国別のインベントリ(目録)作成、(2) 製品から室内ダストへの難燃剤の移行メカニズムに関する鑑識科学的研究、(3) 難燃剤分析のための室内空気採取法の標準化、(4) 難燃剤分析のための室内ダスト採取法の標準化、(5) 難燃剤分析法の開発、(6) 難燃剤体内負荷算定のためのデータ処理、(7) 生物試料の難燃剤モニタリングの国際協調、(8) 難燃剤の代謝研究からなっています。

この中で、当研究室が担当している課題は(2)であり、難燃剤含有製品からの微小片剥離や揮発が、室内ダストを介した人への曝露につながっていることを検証する研究です。ダストの微小粒子中の元素や個別の難燃剤の同定や定量を蛍光X線分析や他の分光学的分析等により進めています(図2)。また、担当課題に限らず、製品ライフサイクルにおける難燃剤の排出挙動における私たち研究グループの専門性が期待されており、知見提供が求められています。

派遣交流状況について

循環センターからは、これまでに研究室メンバー3名の渡欧派遣が終了しています。派遣先と研究内容は次の通りです。

  • アントワープ大学(開発途上国におけるE-wasteリサイクル現場の土壌中の難燃剤分析法の開発と適用)(開発途上国におけるE-wasteリサイクル現場での調査については、2011年12月号「E-wasteリサイクル現場の土とダストを調べる」参照)
  • バーミンガム大学(室内ダスト採取方法の標準化検討)
  • ストックホルム大学(都市域からの難燃剤の大気排出量推算)

一方、欧州からは1-3ヶ月の期間で研究者と大学院生を受け入れています。平成25年9月からバーミンガム大学の大学院生を2名受け入れました。また、平成26年1月からアントワープ大学の研究者を1名受け入れています。

図3 イギリス・バーミンガム大学からの派遣学生による成果発表会風景 図3 イギリス・バーミンガム大学からの派遣学生による成果発表会風景

バーミンガム大学からの派遣者の研究内容を説明します。Ms. Cassandra Rauert (Cassie) は製品から室内ダストへの臭素系難燃剤の移行メカニズム研究を実施しました。イギリスから臭素系難燃剤濃度の高かったダストを持参し、ダスト中の製品に由来する高濃度臭素を含む剥離片の同定を行いました(図2)。微小部蛍光X線分析による臭素の同定のみならず、剥離片のプラスチック成分の判別を試み、また、他元素の存在についても確認し、発生源となっている製品の同定をより確実に行うための分析手法を開発しています。Mr. William Stubbings (Billy) は、繊維製品(カーテン)からの臭素系難燃剤の溶出量や溶出特性を調べる研究を行いました。まず製品溶出試験の方法論を確立し、難燃剤の溶出性が長期にわたり持続する可能性を見出しました。溶出パターンから、溶出が時間とともにどのような因子に支配されるのか(難燃剤の溶解度あるいは吸着平衡や製品中の内部拡散によるのか)考察する段階に至りました。幸いにして二人とも各々の博士論文に活かせる知見を得られたようです。

アントワープ大学からはAdrian Covaci教授 (Adi) が来訪しています。彼はCassieの研究内容や手法に関連して臭素系難燃剤以外の塩素やリンを含む難燃剤のダスト中の存在分布を追究しています。

海外からのゲストの滞在研究に際しては、実験や生活面でのケアなど、研究室のメンバーを多く巻き込む形となっていますが、日常のコミュニケーションをはじめ、刺激を受けることも多く、皆、楽しみつつ関与しているようです。こういったメンバーの協力に感謝しつつ、今後さらに4件の派遣を受け入れる予定となっています。

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