2009年5月25日号
生ごみの品質とリサイクル方法稲葉陸太
生ごみの今生ごみは、いちばん身近なごみの一つです。みなさんが毎日食べるごはんの食べ残しはもちろん、料理する時に取り除く、じゃがいもの皮など食べられない部分も生ごみになります。生ごみは家だけでなく、食堂やレストラン、ファーストフード店(ハンバーガーなど)からも出てきます。また、コンビニやスーパーなどで売っている食品についても、それらを加工または調理する工場で食品に関係するごみが出てきます。売れ残った食品もごみとして扱う場合があります。 これらの生ごみや食品に関係するごみは日本全体で毎年2,000万トン弱も発生しています。ここでは、これら全体を広い意味での生ごみとしてお話します。 日本では生ごみの約30%がリサイクル(再生利用)され、残りの約70%が燃やされたり埋め立てられたりしています。特に、家庭や外食産業(食堂・レストラン・ファーストフード店など)、小売業(コンビニ・スーパーなど)から出てくる生ごみは、食品加工工場から出てくる生ごみに比べてリサイクルされる割合がまだ小さく、工夫する余地が大きいといえます。 リサイクルの目的生ごみをリサイクルする目的としては、新しい資源の消費量を減らすこと、ごみの埋立量を減らすこと、ごみの管理に必要な費用を減らすこと、ごみの管理に関係する環境負荷(二酸化炭素など)の排出量を減らすことなどがあります。生ごみの燃料化やエネルギー回収をする場合は、生ごみに関係するシステム全体でのエネルギーの効率を高めることも目的になります。 これらの目的をどのくらい達成できるかを考えることがリサイクルの効果を評価することになります。また、リサイクルは同時にいくつかの目的を持っていることが普通ですので、あらかじめ、どれがより重要なのかという順番も決めておくことが大切です。 なお、エネルギーの効率については記事「エネルギー収支比(EPR)(2009年5月25日号)」を、リサイクルの効果については記事「どんなリサイクルがよいかな?(2007年7月2日号)」をご参照ください。 リサイクルの方法生ごみのリサイクルには様々な方法があります。例えば、乾燥させたり発酵させたりして家畜のエサを作る「飼料化」、発酵させて肥料を作る「堆肥化」、発酵させてメタンガスを発生させる「メタン発酵」などです。また、揚げ物などに使った後の油については、化学的処理によってディーゼルエンジンの燃料を作る「バイオディーゼル燃料化」などがあります。 費用や技術の面でリサイクルが難しい場合は、焼却・埋立などの「適正処理」を施さなくてはなりません。焼却処理では、ごみを燃やしたときに出る熱を発電などに利用する「エネルギー回収」を実施する場合もあります。生ごみは、それ自身ある程度の熱量を持っていますが、水分が蒸発する時にかなりの熱を奪われますので、回収できる熱は他のごみ組成と比べてそれほど大きくありません。 なお、日本の生ごみリサイクルでは、堆肥化と飼料化の占める割合が大きくなっています。 生ごみの発生源と品質リサイクル原料として生ごみを扱うときに、その品質は、[1]均質性、[2]異物、[3]水分、[4]鮮度などによって大きく左右されます。このうち、[1][2]はどんなごみでも当てはまる項目です。[3]は生ごみだけではなく、生き物に由来するごみ、いわゆる「廃棄物系バイオマス」(2008年11月17日号「循環・廃棄物のまめ知識」参照)全体に当てはまる項目です。廃棄物系バイオマスには、生ごみを始め、古紙、廃木材、家畜のふん尿なども含まれます。[4]の鮮度は生ごみ独特の項目です。 生ごみの品質は、発生源の種類に大きく左右されます。食品加工工場で発生する生ごみは、主に加工食品を作るときに出た残りものです。工場では品質を管理しながら同じものを大量に作っているため、発生する生ごみは質のばらつきが小さく、異物が少ないものとなります。 スーパーやコンビニなどの小売店で発生する生ごみは、野菜や肉や魚の切れ端、売れ残った弁当や加工食品です。鮮度は比較的高いものの、質にばらつきがあり、包装材などの異物を取り除かなければなりません。また、包装されたまま捨てられた加工食品では、鮮度が比較的長く保たれている場合もあります。 ホテルや飲食店などで出てくる生ごみでは、メニューの多さによる質のばらつき、包装材などの異物の混入、回収が毎日でないことによる鮮度の低下がみられます。 家庭で発生する生ごみは、さらに質のばらつきや、異物の混入、鮮度の低下が大きくなります。このように、ひとくちに生ごみといっても、発生源の種類によって品質に大きな差がみられます。 再生品需要と生ごみ供給を考えたリサイクル方法を飼料化には、均質かつ新鮮で異物が少ない良質な原料が必要です。飼料には乾燥飼料と液体飼料があり、前者を作る場合は生ごみの水分が多いと費用や必要なエネルギーが増えますが、後者は水分が問題になりません。 堆肥化では、飼料化に比べると均質性や異物や鮮度が多少落ちた生ごみでも原料として利用可能です。ただし、異物の混入は堆肥を利用する農家が最も気にする点です。 メタン発酵では、生産するのがガスであるため、農家など利用者の要求を考える必要がなくなり、堆肥化よりさらに品質が落ちた生ごみを利用できます。ただし、均質性があまりにも低いとガスの発生量が安定しなくなります。また、残った発酵液を液肥や堆肥として利用する場合は、やはり農家の要求に応える品質やそれに見合った原料が必要です。 生ごみのリサイクルで注意しなければならないのは、良質な再生品を作っても需要や経済性がなければ余ってしまい、他のごみと同じように適正処理が必要なごみになってしまうことです。例えば、ある地域で食品工場の生ごみから豚用の良質なエサを作ったとしても、輸送費を払っても損をしない距離に養豚場がなければ、そして何よりその養豚農家がエサを使ってくれなければ、生ごみの飼料化による循環のシステムは成り立たなくなります。 以上のことから、生ごみのリサイクルでは、発生源や品質に応じて可能なリサイクル方法を考える一方、想定している地域でどのような再生品の需要があり、採算がとれるかも調べなければなりません。そして、再生品の需要と生ごみの供給が質・量・経済性ともに条件を満たしたリサイクル方法を選ぶべきでしょう。 <もっと専門的に知りたい人は> |
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