2009年5月25日号
エネルギー収支比(EPR)倉持秀敏
エネルギー収支比(英語では、Energy Profit Ratio:EPR)とは、あるエネルギー資源、例えば石油や石炭などの化石燃料からどれだけエネルギーを回収できるのか、もしくは、どれだけエネルギーを作り出せるのかを表す指標のことです。EPRは、次式のように、得られる(出力)エネルギーを分子に、その出力を得るために資源に投入したエネルギー(資源の採掘、輸送、エネルギーの製造などに係るエネルギーの総和)を分母とした比で定義されます。 さて、このEPRの値の持つ意味を簡単に説明します。EPRは1よりも大きい値になればなるほど、投入したエネルギーよりも作り出せるエネルギーの方が大きくなります。つまり、大きいEPRを持つエネルギー資源は効率が良く、質の高いものと判断できます。逆に、EPRが1よりも低い値になると、作り出すエネルギーよりも投入エネルギーの方多くなり、そのようなエネルギー資源は利用しない方がいいでしょう。また、この投入したエネルギーの内訳から、EPRを上げるための対策を検討することができます。 例えば、近年、温暖化対策に有効な燃料としてバイオ燃料が注目されていますが、そのEPRを見てみましょう。Hillらの論文1)を引用すると、とうもろこし由来のバイオエタノールは1.25、大豆油由来のバイオディーゼルは3.67になります。バイオエタノールのEPRは1を越えているものの、その値は高くありません(ちなみに、他の論文や記事でも似たような結果が報告されています)。では、EPRを上げるにはどうすればいいでしょう。図にバイオエタノールの投入エネルギーの内訳を示します1)。EPRを高くするには、投入エネルギーの少ない製造方法を開発することや、穀物より投入エネルギーのかからない原料を利用することが重要だということが分かります。 <参考文献> |
||