循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のけんきゅう!
2008年6月23日号

廃棄物埋立地の透水性と安定化

朝倉 宏

 埋立地に雨水が浸透すると、廃棄物からいろいろなものが溶け込んで浸出水(汚水)が発生します。浸出水が埋立地外に流れ出たり、地下水に到達したりすると、周辺の環境を汚染してしまいます。そのため、埋立地は遮水シートなどによって周辺と区切られており、これによって浸出水を周囲に漏らさず、集めて処理施設に送ることが出来ます。

 さて、埋立地からの汚水はいつまで発生するのでしょう。埋立地内部の廃棄物は、有機物の分解、塩類や重金属等の洗い出し(埋立地の外に出る)や不溶化(埋立地の中に閉じ込める)によって安定化していきます。安定化の定義には諸説がありますが、ここでは、埋め立てた廃棄物に含まれているものが分解したり、溶け出たりすることがほとんど終了した状態だと考えます。 この状態になると、雨水が浸透しても汚水が発生しなくなるので、埋立地の管理が必要なくなります。埋立地の管理をやめることを「廃止」と言います。ただ、廃止までに必要な時間は実はよく分かっておらず、数十年とも、数百年とも言われています。一方で、埋立地の安全を保つ遮水シートの寿命は、場合によっては十数年ともいわれています。

 そこで、私たちは、廃棄物を埋めてただじっと待つのではなく、埋立地は一世代(20〜30年)で安定化が完了するように管理すべき、という方向性を打ち出しました。これを達成するためには、「入れる物(廃棄物)の品質向上」、「入れ物(埋立地構造)の強化」、「入れ方(埋め方)の改善」が必要と考えています。

 ここでは、「入れ方(埋め方)の改善」について紹介します。

 埋め立てた廃棄物に含まれる有機物の微生物分解は、酸素が十分に存在する好気性の状態の方が、酸素が無い嫌気性の状態よりも非常に速く進みます。そこで、日本の埋立地は酸素が含まれる大気が外から自然に流入する仕組みになっています。 しかし、水はけの悪い(透水性が低い)覆土をしたり、汚泥を埋めたりして、埋立地の中に水溜まり(帯水層)が出来ると、水によって蓋をされた状態になり、それより下に酸素が侵入できなくなり、期待していた好気性分解が起こりません。よって、覆土と埋立廃棄物の透水性が高くなるように、入れ方を改善する必要があるわけです。以下では、私たちが行った実験について簡単に紹介します。


覆土の透水性向上

 実験では、2本の模擬埋立実験槽(ライシメータ)を作りました。このライシメータには、下から覆土、廃棄物試料(建設廃棄物など)、最上部に下部と同じ覆土が充填されています(図1)。そして、上から人工的に雨を降らせました。覆土は、透水性が高いもの(ライシメータ1、以後LM1)と低いもの(ライシメータ2、以後LM2)を使いました。このライシメータからは、充填層内の水、下から排出される浸出水と、層内ガスが採取できるようになっています。

図1. ライシメータ概要

 しばらく実験を続けると、LM1の層内には十分に酸素が供給されたものの、LM2では覆土に水が溜まり、層内の酸素が不足するようになりました(図2)。層内水の有機物濃度の減少は、LM2に比べてLM1では格段に速くなり、覆土の透水性を向上させると、廃棄物の安定化が早まることを示しています(図3)。

図2. 高さ方向の層内酸素濃度(100日目)図3. 層内水の有機物濃度の変化


埋立廃棄物の透水係数

 単独で埋めると透水性が低い汚泥は、他の廃棄物と混合することによって透水性を向上させることが出来ます。図4に、汚泥にスラグを混合させたときに、埋立層へ酸素が侵入する深さを推算したものを示します。埋立層内は、周囲に比べて温度が高くなることがあります。0、10および20℃だけ層内温度が高い場合について計算しました。汚泥にスラグを75%程度混合すると、侵入深さが桁違いに向上することが分かります。

図4. スラグの混合割合と酸素の侵入深さ
<もっと専門的に知りたい人は>
  1. Asakura, H. et al.: Effect of hydraulic conductivity on stabilization of landfill layer of industrial solid waste, Sardinia 2007, CD-ROM , 2007
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