「廃棄物問題について、学校ではどんなことを学びましたか?」と聞かれると、なかなかすぐに答えられないかもしれませんが、ごみの清掃工場を見学したことを覚えている人は多いのではないのでしょうか?これは、文部科学省の「学習指導要領」において、小学校4年生の社会科で、住んでいる地域の廃棄物処理について学ぶことが定められており、その一環として多くの学校で地元の清掃工場の見学が取り入れられているからです。学習指導要領では、ごみ、下水のいずれかを選択するよう記載されているので、清掃工場の見学に行った記憶が無いという方は、もしかしたら下水処理場に見学に行ったのかもしれません。
学習指導要領は、時代のニーズを反映して10年に1度のペースで改訂されます。ごみの処理に関する記述は戦前の教科書にもありましたが、公害が大きな社会問題となった高度経済成長期の真っただ中である1968~1970年に改訂された学習指導要領から、本格的に廃棄物問題について学ぶカリキュラムが導入されました。
現在の小学校4年生の社会科では、人々の健康や生活環境を支える地域事業について理解することが重要なテーマのひとつとされており、廃棄物問題だけでなく、電気、ガス、上下水道といった社会に欠かせない基盤事業を扱うことになっています。ですから、日本の小学校に通う人はみんな、小学校4年生のときに12時間程度の授業時間を使って、じっくりと地元の廃棄物問題について学ぶことになります。内容としては、ごみの収集や処理の仕組みを理解し、処理事業の社会的な重要性を考えることに重点が置かれています。小学校4年生の社会科で学んだ後は、実は学校での教科教育で廃棄物について学習するまとまった時間は設けられていません。ですから、多くの人にとって、この4年生社会科での学びは、廃棄物や資源循環に関する知識のベースになっていると考えられます。
2020年度、10年ぶりに改訂された学習指導要領が小学校でスタートしました(中学校は2021年度から、高等学校は2022年度から)。新しい学習指導要領では、「何を」学ぶかだけでなく、「どのように」学ぶかも重視されており、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点から学習過程を見直すことが期待されています。また、学習を通して習得した知識・技能や思考力・判断力・表現力を、自分の人生や社会に活かそうとする「学びに向かう力・人間性」を重視する方針も打ち出されています。さらには、こうした新しい教育を実現するために、社会や地域と協力して必要な資質を育む「社会に開かれた教育過程」を目指すこと、様々な教科にまたがる学習を充実すること等が提案されています(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm)。
今回のような改訂がおこなわれた背景には、我々の社会が今後よりいっそう変化に富んだ、予測不可能な時代に突入することへの危機感があります。これまでの社会システムを当たり前のように捉えるのではなく、自ら考え、判断し、より良い社会を創る力を身に付けて、子供達になんとかこれからの荒波を乗り越えて欲しいという想いが込められているのだと思います。
先に述べた小学校4年生の社会科の授業においても、単に廃棄物問題の知識を身に付けるだけでなく、様々な人と力を合わせて問題解決に取り組む方法を学び、何らかの協働的なアクションに挑戦してみるような授業例がでてくるかもしれません。こうした新たな学びのスタイルをより多く創っていくためには、学校だけで取り組むのではなく、家庭、地域、その他の機関が協力することが欠かせないでしょう。弊所もそのような役割の一翼を担えればと思います。