私たちの毎日の生活から出るごみを中心とする「一般廃棄物」は、重量割合で80%近くが焼却処理されています。廃棄物を焼却すると、有機物は二酸化炭素や水などのガスになって煙突から放出され、石や砂を細かく砕いたような粒子とともに、様々な金属が焼却灰へ濃縮されます。その結果、燃やす前には目立たなかった金や銀などの貴金属や、鉛やカドミウムなどの有害金属の濃度が焼却灰では高くなっているのです。
焼却灰は、現在、年間約400万トン発生していますが、その有害性の高さの点から周辺環境に影響を及ぼさないように適切に管理され、主に埋立処分されています。しかし、最終処分場のスペースが限られていることもあって、リサイクルも徐々に進んできています。例えば高温で溶融処理してスラグ化したり、セメント原料としてセメント工場に受け入れてもらったりすることによって全体の約4分の1はリサイクルされるようになりました。
一方、資源性の観点からは、わが国では以前から、比較的大きな鉄やアルミニウムなどの回収のみが行われています。ところが、近年、ヨーロッパでは、貴金属を高濃度で含む灰粒子の選別回収技術が急速に普及しました。回収のターゲットとなる灰粒子とは、焼却炉の下から排出される「焼却主灰」(写真)に含まれる、数mmから数cmの大きさの粒子で、その中でも特に比重の大きな粒子になります。写真に示すように焼却主灰は様々な大きさや素材の粒子から構成されていますが、貴金属は比重の大きな粒子に多く存在しているので、ヨーロッパでは、焼却主灰からそのような粒子を選別し資源として売却できるレベルにまで濃縮しているのです。
ここで、比重の大きい粒子には有害金属も高濃度で存在している可能性があります。そこで比重選別によって高比重側を回収することにより、残される低比重側の焼却主灰の安全性も高められれば、高比重側の貴金属回収・リサイクルだけでなく、低比重側の土木資材としてのリサイクルの可能性も広がることが考えられます。これらの可能性を確かめるために、当研究センターでは、わが国の焼却主灰に対する比重選別技術の適用性について研究を開始しました。
なお、ヨーロッパにおける焼却主灰の選別回収技術の広がりについては、以前に国環研ニュースで少し詳しくお伝えしているので、併せてご一読いただければ幸いです。
<関連する調査・研究>
- 資源循環研究プログラム 5
- 基盤的な調査・研究 4:廃棄物等の建設材料利用や埋立処分に係る試験評価管理システムの高度化