循環・廃棄物の豆知識
2015年4月号

社会蓄積量(ストック量)とは?

中島 謙一

潜在的二次資源としての社会蓄積(ストック)

私たちは、自然界に存在している物質を、私たちが経済活動を営んでいる社会に取り出して、加工して、使用しています。例えば、私たちが利用している自動車を作るために、原料となる鉄鉱石などの鉱物資源を自然から得て、鉄鋼材料などに加工して、使用しています。社会蓄積(ストック)とは、このように物質が社会にに取り出されて蓄積されている状態をさし、その物質量を社会蓄積量(ストック量)と呼びます。私たちの生活を支えている住居や道路などのインフラ設備、自動車や電車等の輸送機器、家電製品などの電気電子機器類、鍋・食器等の生活用品など、多様な形態で、社会には物質が蓄積されています。

比較的、新しい学問領域の産業エコロジー(Industrial Ecology)の分野では、この物質の社会蓄積量を推計する取り組みが精力的に実施されています。社会蓄積のなかで、使用中の社会蓄積を"In-use stock"と呼びますが、例えば、日本における鉄のIn-use stock量は、1人当たり7.4トン~14トン程度という値がいくつかの推計から得られています1)。一方で、人工物圏に蓄積された物質のなかには、"Hibernating materials"(冬眠している物質)と呼ばれる利用されていない物質の存在が指摘2)されています。これは、主に地中に残存し使用されていない物質をBrunnerが評した表現であり、相当量の存在が指摘されています。具体的な例としては、地中に埋められて使われなくなったケーブルなどがあります。この他にも使用中に摩耗して飛散した物質など、認識されずに散逸している物質なども、社会には蓄積されているものの利用されていない物質と言えます。

イラスト社会蓄積された物質は、将来的な廃棄物の発生源であると共に潜在的な二次資源とも言えます。社会蓄積されている物質を、適切に管理して、回収して、リサイクルをする事により、天然資源等の投入を削減できる可能性が秘められているのです。実は、皆さんの身の周りにもこれらに準ずるような「利用されていない物質」があるのではないでしょうか?例えば、以前、使用済み小型家電の『退蔵』として、使用されずにしまいこまれている携帯電話やデジカメなどを取り上げましたが、2013年の4月には、「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」、略して小型家電リサイクル法が施行されました。これを機会に、身の周りにある「利用されていない物質」に目を向けてみてはいかがでしょうか?

参考資料
  1. S.Pauliuk, T.Wang, D.B. Muller. Steel all over the world: Estimating in-use stocks of iron for 200 countries, Resources, Conservation and Recycling 71 (2013) 22- 30
  2. P.H.Brunner. Materials Flow Analysis and the Ultimate Sink, Journal of Industrial Ecology, 8 (2004) 4-7
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