循環・廃棄物の豆知識
2013年11月号

フットプリントあれこれ

南斉 規介

フットプリントとは日本語で足跡ですが,雪道での足跡のようにそれをみれば,踏んで来た場所が分かりますね。環境負荷量の評価では,現在この足跡の様子をなぞらえて様々なフットプリントが考案されています。原料の採掘から始まって使用,廃棄されるまでどこでどれだけ環境に足跡を残して来たか,つまり負荷を与えたかを計算します。有名なのはエコロジカルフットプリントやカーボンフットプリントですが,水の消費量を示すウォータフットプリント,PM2.5などの大気汚染物質フットプリント,資源の採掘量を示すマテリアルフットプリント,土地の改変量を表現する土地利用フットプリント,栄養塩(リンや窒素)を対象としたフットプリント,そして環境負荷や土地改変を通じた絶滅危惧種への関与を示す生物多様性フットプリントも提案されています。さらに派生して,環境問題だけでなく社会問題に適応したフットプリントの計算も行われています。例えば,国別に労働者数のフットプリントや紛争鉱物での死者数フットプリントが推計されています。こうしたフットプリントから,ある国の経済が国際貿易を通じて,世界各国に及ぼしてきた環境や社会問題の大きさ(足跡)を知ることができます。世界には自国の力だけではこうした問題を解決することが難しい国や地域が存在します。つまり,そうした国や地域に付けられるフットプリントを小さくするには,技術や経験,財力を持つ国や地域の援助が不可欠です。日本には優れた技術や公害を乗り越えた豊富な経験があります。こうした技術や経験に基づく支援を通じて,日本は世界に残したフットプリントを自ら小さくしていく必要があります。これは,持続可能な社会を実現する上で,日本が国際的に果たすべき役割の一つと考えられます。

イラスト:もとこ
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