光触媒とは、光を照射することによって触媒作用を示す物質の総称です。その材料は、紫外光駆動型と可視光応答型に区分されます。Ti4+、Zn2+、Ta5+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Sb5+といったd10型(電子軌道にはS、P、d、f 軌道があり、同じ殻の電子軌道のエネルギー準位はS<P<d<fで、電子は低いエネルギー準位の軌道に優先的に配置される)という電子配置を持つ典型金属イオンを含む複合酸化物は、波長10~400 nmの紫外部の光照射下で作動する紫外光駆動型光触媒です。また、紫外光駆動型光触媒は、波長500~600 nmの可視光を吸収する金属錯体や有機色素などとハイブリッド化して可視光応答性光触媒になる場合があります。
光触媒材料の機能の中で、照射光の透過は触媒性能の発現において大変重要です。また、各種化合物の吸着は光触媒反応が進行する場を提供します。図1に示すように、光触媒に光が当たると生じた電子が気相から吸着した酸素分子(O2)に付加してO2-を生じ、また価電子帯に生じた正孔(マイナス荷電の電子が不足するために生じたプラス荷電を帯びた箇所)が、吸着水や表面の水酸基と反応して・OHに転換し、ともに活性酸素種として吸着した有機・無機基質の酸化を行なうことができます。生じた電子の水分子への移動と正孔から生じる活性酸素種によって、基質の還元を引き起こすこともできます。
光触媒を高活性化することや可視光応答型とすることは新規の光触媒材料の探索および開発の鍵となっています。光触媒活性成分の微粒子化(ナノ粒子化)、活性成分の多孔体化(ナノ空間利用型)、カーボンとの複合化(ハイブリッド化)、金属の担持(ドーピング)による相互作用強化と吸着能力の向上および活性点の高分散化による光触媒の高活性化、などが期待されます。特に可視光応答型については、地表に到達する太陽光の大部分は可視光であることから、太陽光によってより効率的に作用する光触媒の開発が行なわれることで、光触媒反応の応用範囲、特に大気や水質に低濃度で広範囲に拡散している環境汚染物の浄化での応用がさらに拡大することが期待されます。