循環・廃棄物のけんきゅう「嫌気性処理技術を用いた汚水の省エネルギー浄化」の記事では、嫌気性処理の反応を簡単な化学反応式の形で表現して、その原理を解説しました。このような式を使って、反応タンク内の物質の流れを簡易的に予測するのに役立つ、実用的な方法を紹介します。ここでは、先述の記事で紹介された(式1)を少し複雑にした次のような式を使います。
ここで、a、b、c、dは原料の元素組成を分析することによって決定します。この式から、有機物の分解によって生成するメタン、二酸化炭素、アンモニア、重炭酸の量を予測することが可能です。この式(、生ごみ、汚泥など幾つかのケースに適用してみた結果、ほとんどの場合、メタン生成反応をよく表現できることが確認されています。既に判明している有機性廃棄物の元素組成を利用して、嫌気性分解によるガス生成量を試算した結果を表1にまとめました。このように嫌気性処理では、対象とする原料の種類によって、ガス生成量およびメタン濃度は異なることがわかります。
原料 | 反応式 | 原料の乾燥重量1kgあたりガス生成量 (m3) | メタン濃度 (%) |
---|---|---|---|
調理くず |
C17H29O10N + 6.5H2O → 9.25CH4 + 6.75CO2 + NH4+ + HCO3- ここでa = 17、b = 29、c = 10、d = 1 |
0.881 | 57.8 |
生ごみ |
C46H73O31N + 14H2O → 24CH4 + 21CO2 + NH4+ + HCO3- ここでa = 46、b = 73、c = 31、d = 1 |
0.888 | 53.3 |
乳牛排泄物 |
C22H31O11N + 10.5H2O → 11.75CH4 + 9.25CO2 + NH4+ + HCO3- ここでa = 22、b = 31、c = 11、d = 1 |
0.970 | 56.0 |
下水汚泥 |
C10H19O3N + 5.5H2O → 6.25CH4 + 2.75CO2 + NH4+ + HCO3- ここでa = 10、b = 19、c = 3、d = 1 |
1.003 | 69.4 |