循環・廃棄物の豆知識
2012年10月号

国際的なマテリアルフローと循環型社会基本計画の指標

寺園 淳

国際的なマテリアルフロー

日本は資源に乏しい国といわれ、化石燃料・金属・バイオマスなどの資源を海外からの輸入に頼った生産・消費活動を行ってきました。また、輸入した資源から国内で製品を生産し、自ら消費するだけでなく、自動車や家電などの製品を輸出してきました。

このような資源採掘から生産・消費に至る流れは、「国際的なマテリアルフロー」、あるいは「国際的なサプライチェーン」などと呼ばれており、途中に中間製品も多数あって複雑なものとなっています。最近では、東日本大震災やタイの洪水により、電子部品の生産がストップすることで、日本各地の自動車生産ならびに海外における自動車生産にも支障をきたす事例も認識されるようになっています。

循環型社会基本計画における指標の見直し

日本の循環型社会づくりの進み具合については、循環型社会形成推進基本計画(以下、循環基本計画といいます)の中で、資源生産性、循環利用率、最終処分量という3つの指標が使われています。2003年3月の第一次循環基本計画決定以降、これらの指標は毎年進捗が点検され、2008年の第二次循環基本計画では2015年度の目標に向けてほぼ着実に改善していることが確認されています。

さて、前述のような国際的なマテリアルフローを考えるとき、2つの疑問が生じます。第一は、資源生産性として天然資源等投入量(Direct Material Input; DMI)あたりの国内総生産(GDP)を計算していますが、天然資源等投入量には海外での環境負荷は考慮されなくてよいか、という点です。第二は、近年の生産拠点の海外移転に伴う変化を考慮しなくてよいかという点です。

第一の点については、第二次循環基本計画から、推移をモニターする指標として、関与物質総量(Total Material Requirement; TMR)が追加されました。TMRは、資源採取に伴って掘り起こされた土石などの量であり、日本が1年間に輸入している金属資源1億トンに対してTMRは約21億トンという推定例があります。国内で循環的利用を進めることにより、国外での環境負荷を減少させることにつながります。

第二の点については、現行指標では輸入製品について製品重量で計算しており、鉄や銅など一次資源のレベルまでさかのぼってDMIをカウントしていません。つまり、生産拠点の海外移転を進めて、輸入するものを資源ではなくて製品にシフトしていくと資源生産性が上がる構造となっています。このような指標ではよくないため、輸入製品を一次資源の量でカウントした上で、国内で消費した資源や製品の量を計算し、一方で海外輸出する製品に関連する量は外すという、消費ベースの指標を使うことも検討されています。

経済のグローバル化に伴って指標も複雑になりそうですが、2012年度中に予定されている第3次循環基本計画では、国際化にも対応したわかりやすい指標が期待されます。資源生産性などの物質フロー指標について、欧州各国でも活用が始まっているものの、まだOECDやEUで比較可能なデータ作成のための方法論を検討している段階であり、こちらへの日本の貢献も求められています。

イラスト:たまき&もとこ
<もっと専門的に知りたい人は>
  1. 森口祐一 (2009) 第3章 循環基本計画における指標・数値目標の導入と拡充. In: 崎田裕子, 酒井伸一編. 循環型社会をつくる, 中央法規, 52-83
  2. 環境省 中央環境審議会循環型社会計画部会 各種資料(特に、平成24年5月25日第70回同部会)
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