焼却施設などで使用される耐火物には、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムの酸化物すなわちAl2O3、SiO2、MgOなどが用いられます。高耐食性が要求されるスラグ排出部ではAl2O3-Cr2O3系、熱の伝達性が要求されるボイラー壁ではSiC系というように、材料としての特徴に照らしてそれに適った場所で使用されています。しかし、化学的な組成が同様であっても、できあがった耐火物の性状、例えば耐久性などが異なる場合があります。
耐火物は、一般的に骨材(石や砂)とマトリックス(元は粘土のように非常に細かい粒子で、焼き固めることにより粒子同士が結合して、耐火物を形作る母材)から作られています(図1参照)。通常は、まず、材料の焼き固めによって骨材をつくり、これにバインダーという接着材料を加え、その後マトリックスとなる成分を加えて成型し耐火物とします。このとき、たとえ化学的に全体がA、B2成分から成っていてもどちらをマトリックスに用いるかによって、また使用される環境によって耐久性は大きく変化します。マトリックスを構成する成分は、廃棄物焼却で生成する種々の化学物質による侵食などを受け易くなるからです。他にも骨材の大きさ、骨材とマトリックスの結合状態などが耐久性に影響を与える要因と考えられています。
現在、種々の耐火物(表1参照)が使われていますが、この背景には、化学組成、骨材の種類やマトリックスの組み合わせなどが実際の適用の場で長年研究され、経験が積み重ねられてきたことがあるのです。