2011年3月11日の福島第一原発事故により放射性物質が放出・降下したことで、土壌の汚染や放射性物質に汚染された廃棄物が発生することとなり、除染や適切な管理が求められるようになりました。除染作業や放射性物質汚染廃棄物の管理において、どこにどれだけの放射能が蓄積しているかを把握することは、適切な除染や作業従事者の被ばくの低減において重要です。通常はサーベイメーターで空間線量率を測定して放射線量が高い部位を特定しますが、詳細な分布を得たい場合には測定点を増やさなくてはならず、手間や時間を要します。また、高所や焼却炉内など立入が困難な場所もあります。従って、離れたところから短時間で測定可能であり、かつ放射線量分布を可視化できる装置のニーズは高く、様々な装置が開発されています。
ここでは、私たちが過去の調査研究で使用したそのような装置をいくつか紹介します。
ガンマカメラは、二次元に配置された検出器でガンマ線を検出し、放射線量の面的な広がりを得るための装置です(図1、写真1)。得られたデータを別途CCDカメラで撮影した画像と重ね合わせることで、放射線量分布を可視化しています。私たちは、被災建築物解体調査でこのガンマカメラを用い、解体前後での放射線量分布の変化を確認しました。図2では放射線量が高いエリア(1 μSv/h以上)は赤色で示されていますが、解体前後で赤色のエリアは減少しており、解体により家屋やその周りの土壌に蓄積していた放射性物質が除かれたことで放射線量が低下したことが、一目で分かる結果となりました。
図1 ガンマカメラ模式図
シンチレーションファイバー式放射線量測定装置(写真2)は、ガンマ線により発光する長いひも状に加工したプラスチックシンチレーターの両端に光検出器を備えたもので、放射線量の一次元的な分布を測定する装置です。私たちは、堆肥のストックヤード調査でこの装置を用いて、放射線量分布の可視化を試みました(図2)。堆肥を山の高さ方向にシンチレーションファイバーを沿わせ、左右に移動しながら測定を繰り返すことで、面的な放射線量分布を得ることができました。
図3 堆肥ストックヤードにおける放射線量分布
冒頭にも書きましたが、放射線量の測定では、高線量条件下や危険な場所など、短時間、または遠隔での測定が望ましい状況が多々あります。今回紹介したガンマカメラやシンチレーションファイバー測定装置は、そのような状況下で用いることができ、現場での活用が期待される装置です。