活動レポート
2023年10月号

リサイクル工場の現場から~太陽光パネルと家電~

田山 愛華

はじめに

「リサイクル」という言葉、1度は見たり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。「リサイクル」とは、ごみを再資源化し、新しい製品の材料として利用することですが、実際のリサイクル工場ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

今回は、福岡県北九州市にある「株式会社リサイクルテック」と、「西日本家電リサイクル株式会社」を見学する機会がありましたので、両社の取り組みをご紹介します。

太陽光パネルのリサイクル(株式会社リサイクルテック 様)

日当たりのいいところや屋根の上によく設置されている「太陽光パネル」。ずっと使い続けられそうに思いますが、実は太陽光パネルの一般的な寿命は20~30年で、2035~2040年頃には廃棄される太陽光パネルの排出量のピーク(約17~28万トン/年)がくると言われています。

この太陽光パネルは、ガラス・金属・プラスチック混合物など、多種多様な素材で作られています。三菱ケミカルグループの株式会社新菱の子会社である株式会社リサイクルテックでは、不要になった太陽光パネルを素材毎に分別してリサイクルしています。分別の工程は、①アルミの枠を外す、②接着剤(封止材)やバックシートなどの樹脂を熱分解する、③板状のガラスはそのまま回収し、割れたガラスはふるいで銅線などの大きな部品と分ける(図1)、④風の力などを使ってガラスと細かな異物を完全に分ける、です。これらの工程を経て、混じり気のない(純度99.999%の)ガラスと、アルミニウム、銀や銅を含む銅線やセル等に分別しています。株式会社リサイクルテックによると、以上の工程により、重量で太陽光パネルの約82%(ガラス、アルミニウム、セル、銅線は99%以上)がマテリアルリサイクル(材料リサイクル)されており、また、一部は②の熱分解から発生する熱として再利用されていることから、これをリサイクルとして含めると太陽光パネル全体の重量の99%以上が再利用されているそうです。集められたガラス等の再資源は、必要としている企業等に販売され、新しい材料として生まれ変わり、私たちの生活を支えてくれています。なお、このリサイクル方法では、太陽光パネルのアルミニウム枠以外の部分を「路盤材」として活用する場合と比べてパネル1トンあたり1,363kg、「埋立処分」する場合と比べて80kgのCO2を削減することができるそうです。

図1 細かくなった太陽光パネルがふるいでガラス(左)、セルと銅線の混合物(中央)、微粉(右)に分けられている様子(工程③) 図1 細かくなった太陽光パネルがふるいでガラス(左)、セルと銅線の混合物(中央)、微粉(右)に分けられている様子(工程③)

とても素晴らしい技術ですが、まだ課題も残っているそうです。それは、埋立処分の費用よりもリサイクルにかかる費用がまだ高い場合があることです。リサイクルにかかる費用を減らしていくためには、太陽光パネルのリサイクルの全体量を増やしていくことが重要です。株式会社リサイクルテックは新工場を設立するなど、太陽光パネルのリサイクル受注数の増加に対応できるよう努力を続けられています。また、“太陽光パネルの排出者に、埋立ではなくこのようなリサイクルに出してもらうことで、資源の有効利用が可能であるということを広く知ってもらうことも重要だ”とおっしゃっていました。

家電のリサイクル(西日本家電リサイクル株式会社 様)

みなさんの家にある「エアコン」「テレビ」「冷蔵庫」「洗濯機」といった家電が壊れた時や、不要になった時、あなたはどうしますか?「無許可」の業者に回収を依頼してしまうと、不法投棄、不適正処理、不適切な管理による火災につながることがあるためNGです。また、無料と言っていたのに、荷物を積み込んだ後に高額請求されるというトラブルになることもあります。よって、「電気店に引取りを依頼する」、「市区町村に問い合わせる」、「指定引き取り場所に持ち込む」などの、正しいルートに出すことがとても重要です。

それでは、正しいルートに出した家電は、その後どのように処分されるのでしょうか。私は、全国にあるリサイクルプラントの1つである「西日本家電リサイクル」に話を伺ってきました。

ここでは、1つ1つのネジを手作業で外すことから始まります(図2)。例えばドラム式洗濯機の場合、解体が完了するまで45分、縦型式洗濯機の場合は、たった10分で完了してしまいます。熟練の技ですね。解体された家電は、大きなパーツがあれば機械で細かく砕き、磁力選別、風力選別、水を使った比重選別、近赤外線を使った選別などで、鉄・銅・アルミニウム・プラスチック・ウレタン(冷蔵庫の断熱材)などの資源を分別・回収します。回収された鉄・銅・アルミニウムなどはまた金属原料として使われます。プラスチックは家電や建材、自動車部品に使われます。ウレタンは固形燃料となり製紙工場やセメント工場で使われます。このほか、薄型テレビを分解したときに出るプリント基板からは、製錬会社にて金・銀・銅などの貴金属等が回収されます。これらを含む、すべての資源の再資源化率はなんと95~99%だそうです。

図2 エアコンを手作業で解体している様子 図2 エアコンを手作業で解体している様子

家にある家電をパッと見ても、金属やプラスチック、ガラスなど、多種多様な素材が使われていることが分かると思います。この1つ1つを、精密な機械や手作業で分別するのは大変な作業ですが、このような取り組みのおかげで、循環型社会が形成されていることが分かりました。

西日本家電リサイクルは、工場の見学希望者を積極的に受け入れており、北九州市エコタウンセンターの見学ツアーで見学することができるそうです。実際の現場を見てみたいという方はこちらから申込むことができますので見てみてください。

以上、北九州市にあるリサイクル工場の現場から、太陽光パネルと家電のリサイクルについてお伝えしました。

<参考>
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