活動レポート
2018年8月号

公開シンポジウム2018
~資源循環・廃棄物研究センターの研究紹介~

吉村 篤彦

国立環境研究所の研究を一般の皆さんに知っていただくことを目的に例年開催されている公開シンポジウムが本年も6月15日神戸、6月22日東京にて開催されました。本年は「水から考える環境のこれから」と題して、私たちの生活に欠かせない「水」をメインテーマに様々な研究分野の講演が行われ、東京698名、神戸223名の多くの方にご来場いただきました。

資源循環・廃棄物研究センター(以下、循環センター)からは、徐開欽主席研究員による講演「バイオエコ技術を活用した流域水環境修復とその新しい展開」と、河井主任研究員による「将来における廃棄物処理事業とは?」、西嶋特別研究員による「モノは長く使うべき?短く使うべき?」と題したポスター発表が行われました1,2

写真1 講演の様子写真1 講演の様子

徐主席研究員が講演したバイオエコ技術とは、微生物を利用して水質を浄化する技術(バイオエンジニアリング)と、土壌や植物が元々持っている浄化機能を利用して水質を改善させる技術(エコエンジニアリング)を組み合わせた技術で、有機物や窒素などの除去を目指しています。水の汚染は水不足が発生している開発途上国において深刻な問題ですが、それらの国では技術的、法制度、人材不足など様々な問題から対応が十分ではないのが現状です。講演では、単なる水浄化技術だけでなく、法整備や維持管理のシステム、さらに現地の人々の環境意識の向上・環境教育といった社会環境作りを含めた今後の展望を発表し、来場者の方からは国際社会への貢献について期待を寄せられる場面もありました。

河井主任研究員のポスター発表は"将来の廃棄物処理事業"という難しそうなタイトルですが、地方自治体の人口減少や財政悪化が予想される中で、ごみ処理体制をどのように維持するかという内容でした。そのために今後は「ごみ処理だけ」に目を向けるのではなく、ごみの再燃料化や、ごみ処理場そのものを防災拠点などとして利用し、地域社会の支援につなげる活動などが提案されました。実際に企業や自治体で廃棄物事業に関わっている方も多かったようで、真剣な質問や議論をしていただきました。

一方、西嶋特別研究員はエアコンを例に、家電製品を長く使う場合と頻繁に新しい製品に買い換える場合のどちらがエコなのか、という私たちに身近な親しみやすいテーマで発表を行いました。これは単純に家電の消費電力を比べるのではではなく、新製品の製造から販売までの過程で生じるCO2排出量も計算するというものです。発表の中で、トータルのCO2排出量を考慮すると製品を長く使い続ける方が良い場合もあることを説明すると、「これまで省エネのためには頻繁に新しい家電に交換した方が良いものだと思っていた」と、興味深く聞く質問者の姿が多く見られました。

写真2,3 ポスター発表の様子写真2,3 ポスター発表の様子

普段、研究所の研究がどのように世の中に役立っているかを皆さんがイメージするのは難しいかもしれません。このようなシンポジウムの場で一般の方々に環境研究所の研究を知っていただくことはとても重要な機会であると思います。また今回の記事では紹介出来ませんでしたが、循環センターでは他にも近年頻発している災害時のごみ処理問題、福島原発事故の放射能除染、日本の浄化槽システムのアジア地域への普及など、国内外の社会問題に直結する様々な研究や事業を行っています。現在も、今年7月に西日本で発生した豪雨災害において日々の研究成果を生かした災害ごみ処理の支援活動をしています。そうしたニュースをご覧になった際は、ぜひ私たちの研究所のことを思い起こしていただければ幸いです。今後もこうしたシンポジウムや一般公開、当サイトなどを通して国立環境研究所、循環センターの活動を発信していきたいと思います。

<関連記事>
  1. 徐開欽、環環2015年8月号、バイオ・エコエンジニアリング研究施設における研究概要
  2. 西嶋大輔、環環2018年5月号、サーキュラーエコノミー:モノが円を描く経済
<関連する調査・研究>
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