循環・廃棄物の豆知識
2014年12月号

ライフサイクル影響評価手法

湯 龍龍

例えば、携帯電話をリサイクルする段階では、エネルギー消費による環境負荷が発生しますが、一方で携帯電話に含まれる金属の回収によって埋め立てる廃棄物の量は減少します。また、金属回収により、新たに金属資源を採掘せずに済むため、採掘による生態系への影響を回避することに繋がります。このように、リサイクルに伴う環境影響を考える場合でも、異なる段階における様々な環境影響項目を網羅的に見ることが重要です。

これを実践するために開発されたのがライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment:LCA)という手法です(参考文献1)。LCAは、ある製品やサービスの一生(資源の採掘から、製品の製造、使用、廃棄まで)の各段階で生じる環境影響を定量化し、どの段階が地球環境にどのような影響を与えているのかを把握するにより、効率的に環境影響削減に貢献することが期待されています。

LCAでは、まず、対象製品のライフサイクルを通じて排出される二酸化炭素や消費する金属資源の量、発生する廃棄物などの環境負荷物質の量を計算します。これをライフサイクルインベントリLife Cycle Inventory:LCI)と言います。次にライフサイクル影響評価(Life Cycle Impact Assessment:LCIA)と呼ばれる段階に移り、LCIで計算した環境負荷物質が引き起こす環境影響を評価します。

ライフサイクル影響評価に用いる手法には、異なる環境影響を評価するためのさまざまな工夫がありますが、大きく分けて、環境問題ごとに評価結果を示す方法や、多種多様な環境問題への影響を集約して人間社会と生態系に与える影響を示す方法、あるいは、それらをまとめて一つの指標として示す方法の三つの方法がさまざまな研究者から提案されています。一つ目の方法は十数項目の環境問題を網羅的に示すことができるため、環境影響の全体像を把握したい場合に適します。しかし、この方法は結果の項目数が多いため、影響項目間のトレードオフが生じやすく、評価対象間の比較が困難な場合があります。一方、少数の指標に集約して示す二つ目や三つ目の方法は、結果がシンプルで比較しやすくなりますが、集約するプロセスが複雑で、結果の不確実性は小さくありません。それぞれの手法の特徴を理解したうえで、目的に応じて使い分ける必要があります。

もとこライフサイクル影響評価の手法論は主に欧州、北米と日本で開発されており、日本では日本版被害算定型影響評価手法であるLIME(Life cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)手法(参考文献2)が代表的です。いずれの手法も評価の網羅性や精度を高めるための研究が進められています。鉱山採掘は保護価値の高い生態系への影響が大きいと懸念されています。現在、私たちの「資源循環・廃棄物研究センター」研究グループでは、金属資源の採掘に伴う生態影響を評価するための手法を開発し、エネルギーをかけてでも金属を回収することによって回避できる、採掘段階での生態系への影響を定量的に明らかにする研究に取り組んでいます。

参考資料
  1. ISO (2006) ISO14040-Environmental management-Life cycle assessment-Principles and framework. International Organization for Standardization, Geneva.
  2. 伊坪徳宏, 稲葉敦 (2005): ライフサイクル環境影響評価手法, 丸善株式会社, 東京, 384.
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