近況
2014年10月号

国立研究開発法人化を控えて

寺園 淳

2015年4月から国立研究開発法人になります

イラスト私たちが働いている国立環境研究所は、旧環境庁の国立環境研究所から2001年4月の組織改革で独立行政法人になりました。2014年の6月に独立行政法人通則法が改正されたことにより、2015年の4月から再度組織が変わろうとしています。現在は独立行政法人という名称で研究機関以外も含めて様々な法人がありますが、今後、研究機関について(あくまで独立行政法人の中の)国立研究開発法人という分類ができ、私たちの研究所も「国立研究開発法人 国立環境研究所」となる予定です。

名前だけの問題ではなく、国立研究開発法人として求められるものがこれまでより変わろうとしています。これまでの独立行政法人に対しては、「業務運営の効率化」が強く求められてきました。しかし、研究機関に効率化だけではなじまないという議論があり、今後の国立研究開発法人に対しては、「適切、効果的かつ効率的な業務運営」とともに、最大の目的として「研究開発成果の最大化」が求められることになります。

今後の国立環境研究所と循環センターに求められること

「研究開発成果の最大化」とは、どうやってその評価を受けることになるか、なかなかわかりにくい気がします。技術開発や生命科学などのように「つくる」要素の強い研究機関と比較すると、環境の研究はどちらかというと「まもる」要素が強いこととも関係しています。それでも私たちが最大化すべきものについては、研究成果そのものと環境政策への貢献という2つの観点に分けられると私たちは考えています。

研究成果については、論文発表の件数などがあります。これは研究者や研究機関として、わかりやすい指標ではありますし、これまでも増やす努力をしてきました。ただし、昨今の論文撤回や研究不正などの事例を考えると、件数やインパクトばかりに関心が集中する弊害に十分注意した上で、成果を増やすことが必要になります。

環境政策への貢献について、私たちの資源循環・廃棄物研究センターは2001年4月発足時の前身のセンターにおいて「政策対応型研究センター」という性格で位置づけられたこともあり、環境省をはじめとする中央省庁や地方行政への貢献を常に意識してきました。また、国立研究開発法人の評価に関して2014年9月に総務大臣が決定した指針では、国の諸政策の推進の観点との整合を求められることになりました。これは当たり前のようにも聞こえますが、気になる点もあります。例えば、私たち循環センターの研究分野に近い政策としては循環型社会基本計画、廃棄物処理法、各種リサイクル法などに加え、東日本大震災に伴う災害廃棄物処理や放射性物質汚染廃棄物処理に関する国の取組みも含まれます。国の諸政策の推進はもちろん重要ですが、既存の政策ありきではなく、科学的・技術的観点や社会的・経済的観点、あるいは長期的・国際的な観点など様々な角度からも諸政策の妥当性や課題を検討したり、新たな政策を提言したりすることも必要になります。国の政策や自分たちの研究成果に対しても客観的に見直す努力を続け、社会や国際的な情勢の変化にも対応して、科学的観点や経済性、現場での受入可能性などを常に認識すべきと考えます。各種政策に策定や見直しの機会があるのと同様です。

もとこ・たまき・じゅんそのように考えると、私たちがすべきことはこれまでと大きくは変わるものではないと言えます。「研究開発成果の最大化」と言っても、評価の方法や評価者を過度に意識するのではなく、納税者である国民への還元を常に意識して研究に励むという基本を実践することが重要と考えます。環境意識の高まりとともに、より高いレベルの研究成果とわかりやすい説明によって環境政策に貢献することが、今後ますます必要になるだろうと考えています。

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