けんきゅうの現場から
2015年3月号

迷惑施設問題を考える

秋山 貴

迷惑施設とは

福島第一原発事故によって飛散した放射性物質の影響を受けた地域では、放射性物質を含む大量の廃棄物を一時保管あるいは最終処分(埋立処分)するための施設が必要ですが、施設の建設をめぐっては各地で受け入れ反対の声が出ています(出ました)。反対理由はさまざまですが、住民説明会などで強く主張される論点の一つとして、放射性物質汚染廃棄物を扱う施設が迷惑施設と位置付けられることが挙げられます。

では、そもそも「迷惑」とはなんでしょう。辞書を引くと、「ある行為がもとで、他の人が不利益を受けたり、不快を感じたりすること。また、そのさま。」(小学館デジタル大辞泉)とあります。つまり、迷惑とは、「○○(数値)以上が迷惑」というような線引きがはっきりしたものではなく、人々の感じ方、考え方に左右されるものです。したがって、「迷惑施設」もまた極めて社会的な存在であり、それが迷惑かどうかは必ずしもその施設自体のリスク1)から客観的に判断されるものではなく、時代により、場面により、人により意味するものは異なります。一つの例として、公害白書(環境白書)2)には、

明治中期以降…、すでに当時、大阪、八幡等の工業都市において石炭燃焼に伴うばい煙による大気汚染現象がみられた。しかし、当時の風潮としては、林立する煙突から排出される黒煙は繁栄のシンボルとして受け取られることさえあり、一般的には今日のように大きな社会問題として特に取り上げられることもなかったのである。(昭和44年版公害白書)

との記述がみられます。今の世の中、工場からあからさまな黒煙が出ていれば大騒ぎですが、当時はそれを肯定的にとらえる論調すらあったということになります。

一方、近頃では思いがけない施設も迷惑施設とされることがあります。その一つは保育園や小学校などであり、インターネットで「保育園 迷惑施設」と検索するとたくさんの記事が表示されます。送り迎えによって生じる渋滞や迷惑駐車の交通問題は分かるのですが、「子どもの声がうるさい」ことが騒音問題とされることには違和感を覚える人もいるでしょう。イラストまた、一般的には良いイメージを持たれている風力発電所ですが、現場においては騒音や低周波音などを発生させる迷惑施設とみなされることが少なくありません。

このように、迷惑施設とは施設の特徴から簡単に定義できるものではないこと、そして、潜在的には非常に幅広い施設が迷惑施設となり得ることが分かります。

迷惑施設問題との付き合い方

これまでも廃棄物処理施設は典型的な迷惑施設と認識されており、施設建設に伴う地域紛争が多発してきました。そのため、その解決を目指したさまざまな取り組みが行われていますが、根本的な問題の解消には至っていないのが現実です。それは、迷惑施設の問題が施設のリスクに関する技術的な問題に止まらず、「社会的な存在」を扱う性質上、政治学、社会学、地理学、心理学などの幅広い分野にわたる知見(知識、見解)を必要とするものの、それらを十分に得ることは容易ではなく、また、知見に基づく問題の解決策が示されても社会に適用する(社会が受け入れる)ことが難しいからです。

ここで、少し難しくなりますが、迷惑施設問題を考えるにあたって重要な用語をいくつか紹介します。

  • 総論賛成各論反対:施設の必要性は認めるが自分の身近に設置されることには反対
  • 分配的公正:決定の結果として負担が公平であるか
  • 手続き的公正:決定に至る過程が適正であるか

「総論賛成各論反対」は読んだとおりの意味であり、保育園や廃棄物処理施設の必要性を認めない人は少ないと思いますが、それが家の隣に来るのに賛成するかどうかは別問題ということです。そのような施設の建設に関して、かつては「分配的公正」、つまり、どこに造られるかが重要な論点でした。自宅近くに迷惑施設が既にあるにもかかわらず、同じような迷惑施設が更にできるのは我慢できないということです。それに加え、昨今では「手続き的公正」、つまり、誰がどのように決めるかが重要な論点になっています。建設するのは仕方がないにしても、勝手に決めないで議論に参加させてくれということです。

このように、迷惑施設問題は、「誰がどのような手続きで負担を引き受ける(べきな)のか」の問題だと理解できます。また、話は飛びますが、(渋々支払っている)税金などでも問題は同じです。さらには、この頃話題の格差の問題は、「誰がどのような手続きで利益を受け取る(べきな)のか」という、負担とは逆の利益に関する同じ種類の問題といえます。したがって、それらを合わせて一般化すると、「社会における利益と負担の配分」の問題であると整理できます。そして、これは非常に難しい問題であり、残念なことに唯一の正解はなさそうです。だからこそ、その都度話し合いをして決めていく必要があるのでしょう。

最後に

税金はどこまでいっても税金ですが、迷惑施設はもしかしたら迷惑施設ではなくなるかもしれません。下の写真は大阪市の舞洲工場(焼却施設、粗大ごみ破砕施設)3)です。なんとも派手で、現地で見ると周囲と調和しているかどうかは微妙なところですが、「建物が地域に根ざして、技術・エコロジー・芸術の融和のシンボルとなるよう意図されています」(大阪市)との意気込みで建設されており、施設イメージの転換が図られています。いかがでしょうか。

図1 大阪市環境局舞洲工場(清掃工場) 図1 大阪市環境局舞洲工場(清掃工場)
出典:大阪市ホームページ
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