けんきゅうの現場から
2012年11月号

福島における循環センターの活動と取組み

高田 光康

放射能汚染廃棄物対策の最前線で

2011年3月11日に発生した東日本大震災で発生した津波によって、東京電力福島第一原子力発電所の事故は発生しました。今、この事故によって環境中に放出された放射性物質に起因する様々な問題が起きていますが、環境省は、主に除染事業と福島県内の廃棄物処理の推進を担当する機関として「福島環境再生事務所」を2012年1月に発足させました。

資源循環・廃棄物研究センター(以下、「循環センター」)では、2012年9月号で紹介しているように、放射能汚染廃棄物問題に関して昨年から様々な取り組みを行っています。この問題に関する研究の多くは、廃棄物の適正処理に関する研究を通じ蓄積してきた知見をベースにしながらも、循環センターのメンバーにとって未経験の課題で試行錯誤の部分が多く、一方では迅速に知見を得て被災地の現場にそれを反映させなければならないという、大変困難な仕事です。

このような背景から循環センターでは、2012年4月より放射能汚染廃棄物対策の最前線である環境省福島環境再生事務所に職員を常駐して、現場で発生する様々な技術的課題へ我々の研究が有効に役立つよう、現場状況の把握と課題の抽出、研究活動に適切なフィールドの選定、研究成果の情報発信などを行っています。現在筆者が派遣されており、これらの業務を行っています。

福島の抱える課題

大震災から1年半余りを経過してなお、福島県では元の住まいに戻る見通しの立たない人々が多く、原発事故による放射能汚染が住民の日常生活に与える影響は深刻です。また、この問題の影響で災害廃棄物の処理は他の被災県に比べ遅れがちで、復興の妨げになっており、多くの課題を抱えています。

福島の廃棄物処理に関しては具体的に以下の技術的課題があります。まず、警戒区域内にある比較的高濃度の放射性物質を含む廃棄物、その外側の地域から発生し一定以上の放射性物質を含む指定廃棄物、除染作業で出た土壌などを、今後国が整備する最終処分場に処分するまでの間保管しておく中間貯蔵施設の整備も大きな課題の一つです。次に、除染作業では土壌のほかに、樹木の剪定枝なども多量に発生するため、これらの除染廃棄物を安全に保管管理する方策や減容化する手法の確立も求められています。減容化は保管や処分を行うスペースの節約には欠かせませんが、これにより放射性物質は必然的に濃縮されるため、作業者の安全や周辺環境への影響などを考慮した減容化の目標の設定も大きな課題の一つと言えます。

他方で、国や自治体が関与して処理するこれらの廃棄物とは別に、震災前までの物質の流れが廃棄物処理の停滞と放射性物質による汚染のため大きく影響を受けています。すなわち、福島県内においても廃棄物として扱われるものは、廃棄物処理法または震災後新たに制定された特別措置法に従って処理されますが、金属類、コンクリートがら、廃木材や有機汚泥などのバイオマスといった循環資材に関しては、利用側で設定した基準(多くは業界の自主基準)によってその利用の可否や取扱い方法が判断されることになっています。このため、震災前までは問題なく流通していたこれら循環資材の利用が困難となり、発生場所や流通の途中段階で大量に滞留する事態が起きています。また、一方で、放射性物質に関する業界の基準やチェックのシステムが整っていないものに関しては、非意図的であっても社会に流通しているおそれもあります。

福島の復興と放射能汚染廃棄物の処理推進に向けて

このように克服すべき課題が山積している福島の現状ですが、1日も早い復興の実現のため、除染や廃棄物処理に関わる多くの人々は日夜苦闘を続けています。

循環センターにおいても、廃棄物処理過程を中心とする様々な場面、媒体での放射性物質の挙動や汚染の実態に関する知見を集積し、その中から課題点を抽出して対応策を提示するために活動しています。筆者は福島に常駐し、つくば本所の研究チームとの橋渡し役を担っていますが、その重責を果たすためには、現場に足を運んで実情をこの目で見て、問題の本質を的確に把握する必要があります。加えて、放射性物質に対しての市民の不安感は非常に強いため、得られた科学的な知見を速やかに正確にわかりやすく伝えていくことが重要な使命であることも強く感じます。

イラスト:しげる

福島で勤務することにより、最前線の抱える課題、市民の声を循環センターへ、さらには循環センターを通してたくさんの関係する方々へ伝える役割を果たし、循環センターで得られた科学的知見を現場での取り組みに実際に反映させ、情報発信、双方向のコミュニケーションを図るべく、今後とも努力していきます。

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