プラスチックの処理・リサイクル技術 |
セメント原燃料化 [技術の概要] |
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技術概要 |
- セメント産業では、以前からセメントの原燃料として、石炭灰、汚泥・スラッジ、流動床灰、副生石灰などの非可燃性廃棄物から、廃タイヤ、廃油、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物までさまざまな廃棄物を利用してきた。
- 最も一般的なセメントであるポルトランドセメントの製造は、原料である石灰石、粘土、ケイ石、酸化鉄などを一定成分になるように調合し、乾燥・粉砕した後、微粉炭を主燃料として約1,450℃の高温で焼成し、中間原料であるクリンカを、このクリンカに石膏を加えて所定の粒度まで粉砕し、セメントとする工程からなる。
- 廃棄物処理の視点に立つと、セメント設備は以下のように評価される。
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大容量の焼却、焼成機能を有している。 |
A |
セメントの主成分はCaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3である。
これらの成分は天然の鉱石に含まれる成分であり、ほとんどの廃棄物がセメントの原料として利用できる。 |
B |
全国に生産設備が散在しており、物流面での課題が少ない。 |
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- したがって、セメント産業は廃棄物、副産物に関して大きな処理能力とポテンシャルを有している。
- 日本におけるセメントの製造量の平成14年実績7,639万tに対し、廃棄物受入量は2,700万t、廃プラスチックの使用実績は21万tとなっている。
- 廃プラスチックのセメントへの利用は、今後、産業廃棄物系のみならず、一般廃棄物系も含めて拡大すると予想される。
- 廃プラスチックは、燃焼条件が良好であるキルン前部または燃焼条件はややキルン前部に劣る仮焼炉部分から投入される。
- 株式会社トクヤマの実績では、廃プラスチックのキルンでの燃焼について、次の特徴が確認されている。
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プラスチックは完全に燃焼され、未燃分、有害成分が大気中に排出されない。 |
A |
セメントの製造に必要な熱量の50%以上に相当する大量の廃プラスチックを使用できる。 |
B |
廃プラスチックの持つ熱量のほとんどがセメント製造用の熱として、添加物や充填材などの無機成分は全量原料として有効に利用される。 |
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- 廃プラスチックの利用において、障害となっているのがポリ塩化ビニルから生じる塩素分である。
本問題の解決を図れば、一廃プラスチックの利用が可能となり、廃プラスチックの大量の利用が可能となる。
このため、(株)トクヤマが(社)プラスチック処理促進協会、塩ビ工業・環境協会、塩化ビニル環境対策協議会と共同で塩ビをリサイクルするシステムを開発した。
また、太平洋セメント株式会社でも一廃系ごみ焼却灰を利用するエコセメントの開発を終了し、千葉県市原市において実プラントを稼働している。
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出典:松下ら(九州大学)「コンクリート構造物のリサイクルシステム」、文部省科学研究費研究報告書(1997)、太平洋セメントHPなどを基に三菱総研作成 |
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マテリアルフローにおける位置付け、受入実績 |
- セメント工場では、廃プラスチックに限らず、様々な廃棄物を受け入れており、むしろ受け入れている廃棄物に占める廃プラスチック割合は多くないと言える。
但し、大量かつ安価にサーマルリサイクルができることから、今後は、急激に受入量が増加するものと考えられる。
- また、セメント原燃料化手法は、容器包装リサイクル法上の再商品化手法としては認められていない(2005年現在)。
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受入可能な廃プラスチック |
- ハロゲンはセメントの品質および製造プロセスに悪影響を与えるので、ハロゲンを含まない樹脂が対象となる。
また、キルンの運転、品質への悪影響を避けるため、燃焼速度の速い熱可塑性樹脂が対象となる(野嶋(トクヤマ)プラスチックス、平成10年)。
- 受入可能な破砕品の寸法は最大25mmである。
硬質、軟質の廃プラスチックとも破砕して使用する(野嶋(トクヤマ)プラスチックス、平成10年)。
- 太平洋セメントでは、受入廃プラスチック破砕品の寸法を15mm×25mmとしている。
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受入能力 |
- 既存の廃プラスチックのセメント原燃料化プラントの一部を下表に示す。
企業 |
事業所 |
所在地 |
クリンカ製造能力 |
トクヤマ |
南陽工場 |
山口県徳山市 |
5,842千t/年 |
太平洋セメント |
熊谷工場 |
埼玉県熊谷市 |
2,307千t/年 |
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- 廃棄物のセメント工場での受入状況は、下記を参照のこと。ほぼ全ての工場で廃棄物の原燃料化を行っている。
- 破砕設備(燃料化プラント)を有して処理をしている工場は数工場である。
しかし、破砕設備を置かず仮焼炉部分に比較的大きい廃プラスチックを投入している工場はかなりの数にのぼる。
セメント業界では、燃料代替として廃プラの利用拡大に力を入れており、セメント協会の集計によると、01年度の利用量が17万トン(前年度76.8%増)、02年度は21万トン(23.4%増)と急増している。
これを利用する工場も増えており、その多くは窯尻から投入しているが、窯前からバーナーで吹き込む方式の採用も増えてきた。
トクヤマ(南陽工場)では年間8万5,000トン能力の燃料化設備が稼働し大量に使用しているほか、太平洋セメント、三菱マテリアル、住友大阪セメント、麻生セメントなども一部工場でバーナーによる吹き込みを実施している。
(2002年(平成14年)7月15日(月曜日) セメント新聞・7面) |
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- 太平洋セメントが原燃料として2002年度に使用した廃プラスチックは84,682トンであった
(太平洋セメント(株)環境報告書 2003年版)
- トクヤマでは前処理も含め10万トン/年以上の受入を検討中である
((社)プラスチック処理協会「廃棄物燃料化事業普及基盤整備調査」、1999年)。
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前処理の必要性 |
- 異物の除去、受入品質(化学成分など)の維持が必要。
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受入条件等 |
- 受入廃プラの荷姿の制約(バラ、ベール、フレコン)が少ない。針金で緊縛したベールも受入れられる。
1,000mm以上の大きなものも受入れられる。
- 塩素等のハロゲンはセメントの品質および製造プロセスに悪影響を与えるため、ハロゲンを含む樹脂の受入は不可能である。
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