プラスチックの処理・リサイクル技術 |
油化 [技術の概要] |
|
技術概要 |
- 廃プラスチック油化技術は、1970年代に第1次石油危機(オイルショック)、第2次石油危機が重なり、エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っていた日本にとって有意義な技術として期待された。
しかし、1980年代後半には石油価格の低下に伴い経済性の面から、廃プラスチックの油化技術開発の必然性は薄れた。
- その間、通商産業省工業技術院北海道工業技術研究所では、生産量の多いポリオレフィン系(主にPE)プラスチックを熱分解すると、生成油はワックス状を呈することから触媒を利用し常温で液体状の油を得る研究を続け、成功している。
- 1990年代に入り、地球環境問題や廃棄物問題が深刻化するに伴い、油化の技術が再度見直され、基礎研究から実証研究に入り、産業廃棄物については実用設備も出現するようになってきた。
- 一方、一般廃棄物についても株式会社エクアールが菊池市の廃プラスチックを、新治地方広域事業組合が4町村の廃プラスチックの油化を小規模であるが実施していた。
これらは手選別でPVCを除去した廃プラスチックを利用している点に特徴がある。
- 1995年容器包装リサイクル法が制定され、廃プラスチックを油化し「炭化水素油」とする方法がPVCを含むその他プラスチックの再商品化手法として認められた。
2000年4月施行のその他プラスチックの再商品化技術として各社が一廃系プラスチックの熱分解油化技術開発を進めてきている。
そのなかでも歴世礦油株式会社が事業主体となり、(社)プラスチック処理促進協会、千代田化工建設株式会社、シナネン株式会社等が協力して実施した新潟プラスチック油化センターと、(財)廃棄物研究財団が新日鐵株式会社、株式会社クボタと協力し立川市に設置した油化実証設備がPVCを含む一廃系廃プラスチックを油化する実証プラントとして注目された。
1999年に入り、それぞれ実証実験を終え、報告書が出され、特に新潟油化センターについては平成12年4月から営業運転している。
その他にも三笠市や札幌市等で油化施設が建設されている。
- 廃プラスチックの油化技術は焼却場の建設が難しく、埋め立て地もない自治体の廃プラスチックを処理するには一つの選択肢であるが、処理コストが廃プラスチック1kg当たり100〜120円といわれており、経済性の面から課題が残されている。
今後、技術のさらなるブラッシュアップ・合理化・コストダウンが望まれている。
- 処理フローは次図に示すとおりであり、前処理では廃プラスチックの中に混入する異物(缶、ビン、金属類等)を分別分離した後、廃プラスチックを脱塩素装置に、入り易い大きさまでに破砕、または減容化する。また、脱塩工程では、廃プラスチックを約300〜320℃に加熱し液状に溶融する。
廃プラスチックの中の塩化ビニルは、200〜250℃の温度で分解し始め、塩化水素ガスを発生する。320℃で約30分保持すると大部分の塩素が分解除去され、このガスは塩酸回収工程に送られる。脱塩したプラスチックを約400℃で熱分解し、分留・冷却した後、生成油が回収される。
|
出典:容器包装プラスチック油化事業者協議会へのヒアリング調査に基づき作成 |
|
|
- 廃プラスチックの油化技術は、東芝方式とクボタ・歴世礦油方式の2方式に大別される。
前者は、株式会社東芝がビーカーレベルから研究を行い、実用化した技術であり、後者は、(社)プラスチック処理促進協会の実証事業で開発した技術をベースにしている。
以下に各方式の技術の概要を示す。
|
東芝方式 |
廃プラ→(脱塩素(300℃)→熱分解(400℃))→(冷却(原油相当)→蒸留)→数種類の生成油
※(脱塩素→熱分解)プロセスが東芝オリジナルの技術。 |
クボタ・歴世礦油方式 |
廃プラ→(脱塩素(300℃)→熱分解(400℃))→(触媒→冷却)→数種類の生成油
※(脱塩素→熱分解)プロセスは、東芝方式と考え方は同じ。
熱分解した生成油の油質をゼオライト系の触媒を用いて上げる。 |
|
|
マテリアルフローにおける位置付け、受入実績 |
- 油化は、容器包装リサイクル法における再商品化手法として、平成16年度には、プラスチック製容器包装再商品化量の2.1%に相当する0.64万tの再商品化を行っている。
(再商品化に占める割合は平成12年の7.6%から年々減少している)
- なお、産業廃棄物の廃プラスチックの実績については、
コークス炉化学原料化、高炉原料化、ガス化、油化と合わせて2万t(2004年)との報告がある((社)プラスチック処理促進協会)。
|
|
受入可能な廃プラスチック |
- ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンのいわゆる「油化適正3樹脂」のみを限定的に受け入れることが理想であるが、プラスチック製容器包装の場合、排出時点での分別が困難であるため、分別基準適合物を受入対象廃棄物としている。
- 容リプラだけでなく産廃系プラについても受入可能である。
- 札幌プラスチックリサイクルでは、PVCの混入は重量比で10%までであれば処理可能である。
臭素系難燃剤を含むプラスチックの油化については未検討。
- 札幌プラスチックリサイクルでは、農ビ、農ポリの油化についても検討済み。
農ビは脱塩すると石状になり、油化ができないため重量比で50%が限界。
- 札幌プラスチックリサイクルでは、良質のプラスチックでも半年ほどでシュレッダーの刃が摩耗してしまうので、シュレッダーダスト等の粗悪のものは非常に困難。
- 札幌プラスチックリサイクルの熱分解装置は金属異物が混入しても問題ないため、家電、自動車等の大物部材の処理も可能性はある。
|
受入能力 |
- 油化によるリサイクルを行っている主な施設は次表に示す2施設であり、合計処理能力は約2万トン/年である。
|
企業 |
所在地 |
処理能力 |
札幌プラスチックリサイクル |
北海道札幌市 |
14,800t/年 |
歴世礦油新潟油化センター |
新潟県新潟市 |
6,000t/年 |
|
出典:草川紀久(高分子環境情報研究所)「わが国のリサイクル関連制度と技術の最新動向」、工業材料(2000) |
|
前処理の必要性 |
- 2003年現在において札幌プラスチックリサイクルが受け入れている容リプラは、分別の程度が非常に高く、前処理の必要がないほどである。
既存の油化プラントの運営実績を基に設置したプラの乾燥機等も実際には使用していない。
- 札幌プラスチックリサイクルでは、PVC比率10%での稼働を想定していたが、近年、PVCの比率は減少傾向にある。
|
受入条件等 |
- フェノール樹脂等の硬化性プラスチックは油化できないため、収集段階で除外することが望ましい。
- 札幌プラスチックリサイクルでは、PVCの混入は重量比で10%までであれば処理可能である。
|
|