2010年10月4日号
再生可能エネルギーへのパラダイムシフト徐 開欽
現在の私たちの社会や暮らしは、大量のエネルギー資源に支えられています。 日常生活に欠かすことのできない電気、ガス、水道はもちろん、現代社会の基盤となっている交通、運輸、通信なども全てエネルギーを利用しています。日本は化石エネルギー資源をほとんど持たず、輸入に依存しています。近年、資源価格の乱高下や国際的な資源獲得競争の激化、地球温暖化対策に対する社会的要請の高まりなど、資源エネルギー政策を取り巻く環境は大きく、また急速に変化しています。 世界全体の経済規模の一層の拡大、環境の保全、石油による地域紛争、安全保障に関わる様々な理由から見て、現状の化石エネルギーを中心とした社会を維持するのは不可能であり、安全でクリーン、安価で多様なエネルギー供給が求められています。 アメリカは世界一のエネルギー消費国で、日本の5倍以上という大量のエネルギーを消費しています。そのエネルギー消費のパラダイムシフトへの試みが始まっています。オバマ大統領が掲げたグリーンニューディール政策の要は、太陽光、風力、バイオマス等の再生可能エネルギーの導入です。しかし、2007年の1次エネルギーにおける各エネルギーの比率は、太陽光0.1%、風力0.4%、バイオマス5.0%で、計5.5%しかありませんが、3年でこれらを倍にし、2025年までには電力供給の25%をこれら再生可能エネルギーで賄うとしており、これがグリーン・ニューディールの骨格です。このグリーン・ニューディール政策は、今後エネルギー体系のパラダイムシフトを起こす可能性が高いと言われています。 再生可能エネルギーの普及は、温室効果ガスの削減、化石エネルギーからの脱却という効果だけではなく、それに関連する環境産業の育成・強化や雇用の創出にも寄与するという経済対策としての効果も期待されています。 再生可能エネルギーは、国際的にも広く認知されています。例えば、国際エネルギー機関(IEA)によると、再生可能エネルギーは「絶えず補充される自然のプロセス由来のエネルギーであり、太陽、風力、バイオマス、地熱、水力、海洋資源から生成されるエネルギー、再生可能起源の水素が含まれる」とされています。日本においても、2009年7月に成立した「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」により、再生可能エネルギー源は、「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、 大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマスが規定されています。 再生可能エネルギーの特徴として、利用の持続可能性に加えて、エネルギー源の多様化による輸入依存度の低減、利用時の環境負荷が小さいといった点が着目されています。 再生可能エネルギーは、小型・分散型なので普及は難しいとの見方がありますが、逆にこれが有利となることもあります。石油エネルギーを消費する自動車はそもそも分散して走行しているので、電気自動車等に置き換わった場合には小型・分散型の再生エネルギーがエネルギー供給源として有効に機能するのではないかという予測もあります。IT技術の進展もこの動きを後押しする可能性があり、余った電力を必要とするところへきめ細かく送電できるネットワーク作りが実現すれば、小型・分散型の欠点をさらに補うものになるでしょう。 水環境保全再生・廃棄物分野においても、再生可能エネルギーの活用が強化されつつあります。バイオマスはこれまで様々な形態で導入が進められています。エネルギー供給サイドでは、電力事業におけるバイオマス発電、石油事業におけるバイオエタノール等のバイオ燃料の利用、都市ガス事業におけるバイオガスの利用など、また、エネルギー需要サイドでは素材産業におけるバイオマスの原材料としての利活用等、その利用形態や利用される状況は非常に多岐にわたっていて、導入量は増加傾向です。バイオマスとしての汚泥・生ごみ・植物残さ等からのBDF(バイオディーゼルフューエル)、メタン・水素等クリーンエネルギー回収、太陽光発電・風力発電等の水処理システムへのエネルギー利用は、これからの低炭素社会型システム創りにおいて極めて重要といえます。特に、既存電力の制約のある離島、震災時の避難場所としての学校等の汚水処理施設等の電力源としての活用は、衛生学的安全性を確保する上でも必須といえます。低炭素社会を目指した再生可能エネルギーの活用はますます拡大するものと考えられ、今後更に期待されます。
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