循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 社会のうごき
2010年1月12日号

使用済み製品の下取りと回収に関する取り組み

吉田 綾

使用済み製品の下取りサービス

 家庭で不要になったものを「下取り」するキャンペーンが家電量販店や百貨店、スーパーで続々と企画されています。古いデジタルカメラやパソコンを新品で購入する際に下取りするなど、不況で伸びなやむ来店者を増やし、少しでも売り上げをアップさせるための販売促進キャンペーンと考えられます。

 中には循環型社会の構築の推進や自社が販売した商品に対する社会的責任の一環として、使用済みの自社製品を回収している企業もあります。(株)ユニクロでは自社のフリースを回収し、リサイクル(焼却による熱回収)をしています。(株)オンワード樫山では、百貨店と協力して自社製衣類を下取りし、状態の良い物は東南アジアで販売(リユース)し、それ以外は裁断して軍手や毛布にリサイクルしています。このように、下取りされたものすべてがリユースされる訳ではなく、処理・リサイクルされるケースもあります。

 主にリユースできるものを対象とする街中の「リサイクルショップ」では買取ってもらえないようなものでも引き取ってもらえるため、消費者にとっては、不要なものを処分できる上に現金や割引まで獲得できるメリットは大きいと言えます。しかし、企業は使用済み品の回収後の販路や処理方法を自ら構築しなければなりませんし、赤字になることもあるそうです。


アジアにおける下取り・回収キャンペーン

 アジア諸国においても使用済み品の回収促進の取り組みが行われています。

 フィリピン・マニラ首都圏のあるショッピングモールでは、毎月第一金曜日と土曜日にリサイクル可能物の回収イベントを行っています。PETボトルやアルミ缶、古紙の他、デスクトップパソコンや小型冷蔵庫なども持ち込まれています。しかしながら、買い取られた製品は、ジャンクショップと呼ばれる、環境保全設備などのない小規模業者のもとで解体処理されるケースが多々あります。これでは、環境によい取り組みとは言えなくなってしまいます。

 スリランカでは使用済み携帯電話の回収に取り組みましたが、回収した後の適正な処理方法が確立されていないため、保管(ストック)している状態だそうです。

 環境保全のためには、使用済み製品の買取・回収の取り組みは良いことですが、その後の適正な処理・リサイクルの仕組みを構築することも重要であることが分かります。


使用済み小型電子電気機器の回収モデル事業

環環ナビゲーター:りえ

 日本では、昨年から一部の自治体(秋田県大館市、能代市及び山本郡、福岡県大牟田市、茨城県日立市、東京都江東区及び八王子市、愛知県名古屋市及び津島市、熊本県水俣市)で、使用済みのデジタルカメラや携帯音楽プレーヤー、携帯家電などの小型家電の回収が始まりました。スーパーや公共施設、ショッピングセンター、ホームセンターなどに回収ボックスを設置するボックス回収、ごみ収集時に小型家電を分別収集するピックアップ回収、まつりやフェアでのイベント回収が試みられています。最近、家の中のたんすや引き出しなどにしまい込まれている使用済み携帯電話の回収促進事業も始まったところです。小型家電や携帯電話には貴金属やレアメタルといった有用金属が高い割合で含まれているため、回収後は国内のリサイクル業者・金属精錬業者によって処理されます。これら製品のより効果的・効率的な回収方法を検討するのが狙いです。

 使用済み製品の回収方法として、下取りや回収イベント、政府のモデル事業など様々な取り組みが現在行われています。使用済み製品を排出する私たち一般市民も、効率的で環境に良い回収・リサイクルを進めるにはどのような仕組みが必要か、どのような参加・協力できるかを考えてみませんか。

<参考資料>
  1. (株)ユニクロのフリースリサイクル
    http://www.uniqlo.com/jp/corp/pressrelease/2006/01/2006.html
  2. (株)オンワード・グリーン・キャンペーン
    http://www.onward.co.jp/green_campaign/
  3. 環境省ホームページ 使用済み小型家電からのレアメタルの回収及び適正処理に関する研究会とりまとめ
    http://www.env.go.jp/recycle/recycling/raremetals/H20_main.pdf
  4. 環境省ホームページ 平成21年度使用済小型家電からのレアメタルリサイクルモデル事業
    http://www.env.go.jp/recycle/recycling/raremetals/09koubo_kekka.html
  5. 経済産業省「たんすケータイあつめタイ\(^o^)/」事業(2009年11月21日〜2010年2月28日まで)
    http://www.meti.go.jp/press/20091111001/20091111001.html
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