2009年4月6日号
チェンジ藤井 実
米国のオバマ大統領がチェンジ(変革)をスローガンに掲げていますね。廃棄物に関する分野でも、廃棄物の処理・処分に伴う環境負荷の発生を抑制するためには変革が必要です。 そもそも廃棄物を発生させないような社会にすることがまず重要です。そのためには、無駄な製品は買わない(作らない)ということになるのですが、何が必要で何が無駄なものかの判断はなかなか難しいものです。仮に健康と最低限の衣食住が、生きていくために必須のものだとすれば、活き活きとした生活は、残りの多くの無駄によって支えられているとも考えられるからです。 先ごろ開催された国の審議会(中央環境審議会第50回循環型社会計画部会)において、廃棄物を発生させない方法の概念的な整理が示されました。予備的な検討が行われたもので、まだまだ議論の余地がありますが、そこでは天然資源の消費量に着目して議論がなされています。審議会の資料にはあまり明示されていませんが、特に枯渇性の天然資源(枯渇性資源)の消費量です。枯渇性資源というのは、地球上で数に限りのある資源で、植物のようには再生産されないものです。化石資源(石油や石炭など)のように燃やすともう使えなくなってしまうもの、鉄やアルミのように、使っても消失する訳ではないけれども、鉱石からの製造プロセスに多くの化石資源を消費するもの、貴金属やレアメタルのように、非常に存在量の少ないものなどがあります。これら枯渇性資源の消費を抑制すると、貴重な資源を節約できるのは勿論、その使用に伴う環境負荷や、最終的には埋め立てなければならないごみの発生抑制にも繋がることが期待されます。 社会における枯渇性資源の消費量は、次の式で表すことができます。 よく見ると恒等式(必ず左右が等しくなる式)になっていますが、このように枯渇性資源の消費と関連する要素を並べて比べることで、消費量を増減させる要因を考えることができます。右辺の初めに書かれている活動量というのは、日々の生活、学校、仕事、趣味などで使用する「機能」の量です。移動するとか、食事をするとか、資料を読むとか、室内の温度を快適にするとか、それはもう様々なことが含まれます。議論の分かれるところかもしれませんが、私たちが活き活きと暮らしていくためには、活動量を減らす、ということはあまり考えたくありません。活動量を減らすのではなくて、機能を獲得する(提供する)手段を変えることで、枯渇性資源の消費量を減らすというのが、まずできる変革ではないでしょうか。つまり、数式において活動量の値を一定にしていても、そこに掛かる3つの分数の値がそれぞれ減少すれば、枯渇性資源の消費量は減らすことができるのです。 右辺の分数になっている部分の1つ目は、活動量当たりに使用する製品の量です。ごく稀にしか使わない文房具があるとすれば、みんなで共有して使えば1つで済みますよね。1人1個ずつ買って使っていたものを3人で共有すれば、使用する製品量は3分の1に減らせる訳です。 分数の2つ目は、使用する製品のうちの、どれだけが新規に購入(生産)した製品なのかを表します。この値を減らすにはどうすればよいでしょうか? 答えは製品を長く使うことです。3人で共有した文房具を、更にいつもより2倍長く使うと、必要な文房具の数は個々に購入していたときと比べて6分の1に減ることになります。もちろんこの理屈は文房具に限らず、家具や家など、いろいろな製品に当てはまります。ただし、電化製品や自動車など、古い製品の中には使用時のエネルギー効率が悪いものもあるので、買い換えた方がトータルでは環境にとって良くなる場合もあります。 分数の3つ目は、製品を作るときにどれだけ枯渇性資源を使うかを表します。枯渇性資源を使わないためには、バイオマスを使うとか、リサイクル原料を使うといった対応が考えられます。バイオマスについては、決して無尽蔵に使える訳ではありませんので、将来に渡って継続的に使えるように適切に生産・管理して利用していくことが重要です。リサイクルについては、2007年7月2日号「どんなリサイクルがよいかな」でお話ししましたように、効率よくリサイクルすることが重要です。製品を作る部分の改善は、工場の人が勝手にやってくれることだと思われるかもしれませんが、リサイクルするにはごみを分別して出すことが必要ですし、枯渇性資源をあまり使わない製品を、みなさんが選んで購入することも大切なのです。このように、みなさんの日々の生活における変革が、廃棄物の処理・処分や資源消費に伴う環境負荷の発生を減らすことに繋がるのです。 |
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