2008年7月22日号
ナノ材料とその廃棄物貴田晶子
ナノテクノロジーは、基礎研究から応用研究を経て、私たちの生活に密着した様々な製品として実用化が進んでいます。現在の市場規模は2兆円ですが、2030年には10倍になると予想されています。 ナノは、ミリ(10-3)、マイクロ(10-6)、ナノ(10-9)、ピコ(10-12)等、単位を表す接頭辞です。 ナノ材料とは、ナノメートルの長さ(幅や直径)を持つ材料で、100ナノメートル以下の粒子から成る材料というのが一般的な定義です。原子が約0.1ナノメートルの大きさですから、100ナノメートルはおよそ1,000個の原子から成るということです。 ナノ材料として代表的なものは、フラーレンやカーボンナノチューブ等の炭素系素材です。これまで堅い素材として使用されてきた金属材料は、鉄からアルミニウム、マグネシウム、チタンといった軽量金属に替わってきましたが、炭素系素材は更に軽い素材として有望なものです。 酸やアルカリに耐えることも大きな利点です。 ナノ材料には、炭素系以外に銀や白金等の金属系、二酸化チタンやシリカなどの金属酸化物系があります。ナノ材料を利用した製品として具体的な例を以下に示します。生活に身近な製品は1,100商品にものぼっています。
これら素材のうち、生産量が年間1,000トンを超える素材は、カーボンブラック、シリカ、二酸化チタン、ニッケルです。 カーボンナノチューブ、フラーレン、銀は1トン以上とまだ大量に生産されていません。今後は増加することが見込まれている中、ナノ材料は安全なのか、という疑問もあります。 それぞれの材料は、新たな化学物質というわけではありません。しかし、粒子が限りなく小さくなると、電気的性質や水溶性、材料同士の接着性、透過性等様々な性質が変化します。 これが高機能製品の秘密です。食品や医薬品のナノ材料は口から入って、血管や細胞に吸収されやすくなります。それが良い効果を示すこともあれば、逆に悪い性質が発現することもあります。 古くから知られたナノ材料のアスベストは、大量に吸入された30〜50年後に中皮腫を発症させます。 2008年2月に、カーボンナノチューブの腹腔内投与によってアスベスト(2007年9月3日号の「循環・廃棄物のけんきゅう」および「循環・廃棄物のまめ知識」を参照下さい)と同様に中皮腫が発生したことが報告されました。 国際的にも日本(独立行政法人産業技術総合研究所や国立医薬品食品衛生研究所)でも精力的な毒性研究が進められていますが、緒についたばかりといえます。ナノ材料が社会的に受容されるために、国では省庁横断的な取り組みがなされています。 毒性評価は今後の研究成果を待たねばなりません。その間に使用されたこれらの材料・製品は、アスベストよりも更にヒトの身近に使われていますので、一般廃棄物の中に混入する可能性が大きいと考えられます。 製造過程、使用過程、廃棄過程それぞれで起こりうるリスクの管理方策が今後の課題と言えます。 詳しく知りたい方は、以下のサイトに最近の情報があります。例えば、 |
||||||||||||||||||||||||||