循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 社会のうごき
2007年10月1日号

生ごみ処理の将来を占う?

川本克也

 廃棄物処理における最近の大きな課題の一つに、家庭ごみの中の生ごみ(厨芥)や事業系の食品残さをいかに上手に処理し資源化するかがあります。というのも、生ごみや食品残さ(以下では、単に生ごみと呼ぶことにします) の資源化率はかなり低いからです。一般廃棄物中の生ごみの資源化率は、家庭系と事業系の全体で12%、家庭系のみではわずか2.8%(いずれも平成16年度の実績)に過ぎません1)。しかし、このことは逆に言うと有効に利用できる可能性がたくさんある、 ということです。生ごみがこれまであまり資源化されずにきたのには、それなりの理由があるように思われます。第1に、資源化するにはなるべくごみの組成を均一にするのが望ましく、そのためごみは発生した場所で種類別に分別するのがリサイクルに最もかなっていますが、 多様な現代社会において、さらに人口の多い都市部において、分別の徹底は容易なことではありません。また、雑多な組成で排出されたごみの中に含まれる生ごみをそれ以外の例えばプラスチックなどの異物から分けることは、 ある種の機械装置で可能であることも特定のケースで実験的に実証されていますが、大規模で一般的な実用に至るには機が熟しているとは考えにくい状況です。

 このような中で、少し新しい方向性が見えています。生ごみや紙ごみに対しメタン発酵法によるバイオガス化を行ってメタンガスを回収する方法です。ただし、この方法では液状・固体状の残さが発生するので、その対応も必要です。 発酵後に生じる固体状残さについては、他の可燃性廃棄物とともに焼却処理によって減量化し、そしてバイオガスと焼却の熱利用による発電を最新の効率の良い設備を用いて行うのです。焼却に発電を組み合わせただけの方法より、 全体的なエネルギーの回収をより効果的に行えると推算されています。システムの流れは例えば図のようであり、実際の施設例は民間の廃棄物処理施設でみられます2)。 ごみの全量を焼却した場合と生ごみの一部を分別してメタン発酵させた場合のエネルギーの収支をある条件で計算(バイオガスについては、ガスエンジンによって発電を行うと仮定しています。)した例3)によると、発電量が約16%増加するとのことです。

バイオガス化と焼却を組み合わせたごみ処理方法

 一方、主に首都圏などの都市部にみられる動向として、新しく建設される集合住宅を中心にディスポーザーの設置が増加しています。方式には主に2通りあって、家庭の台所で発生する生ごみがディスポーザーによりその場で破砕されスラリー状となって排水管を流れて直接公共下水道に投入される場合と、 一度集合住宅敷地内での排水処理を経て下水道へ投入される場合があります。設置戸数は、平成11年度には1,000余りであったものが平成12年以降大幅に増加し、平成18年度には全国で51,000余となりました。この急増の背景には、 平成10年にディスポーザーの採用についての自粛が解除されたことがあります(建築基準法の規定に基づく建設大臣の一般認定による)。

 ここでディスポーザーの特徴を簡潔にまとめてみます。わが国での歴史を考慮して短所から記しましょう。ディスポーザーは、従来から生ごみが目の前から消える道具として知られていましたが、下水道への負荷が増すこと、 生ごみを流すことを見込んだ下水管の管路や終末処理施設の設計がなされていないことなどから、明確ではなくとも多くの自治体では使用を避けるよう措置をとってきました。

 一方、長所はというと、とにかく生ごみを即座に排除できるので衛生的であること、あるいは今後の高齢化社会においては利用者にとって大変便利であることなどがあります。 管路によって集中的に輸送・処理処分ができることから、 分別の困難な生ごみを容易に分けられ、大規模集中型の処理が可能になります。汚泥として得られるバイオマスをメタン生成などに活用できれば、資源化という趣旨でも好ましい都市基盤施設と考えられます。 ディスポーザー導入による都市の下水処理・ごみ処理システムへの影響について二酸化炭素の排出量を尺度にしたLCAが東京23区を例に行われ4)、導入後は前に比較して若干排出量が増すものの、全体量に対する比はわずかであると結論づけられています。 なお、生ごみを新たに下水に投入することによる問題(大量雨水時の環境への流出、栄養塩類(窒素・リン)負荷の増大など)が指摘されていることも忘れてはならないでしょう。

 さて、生ごみ?の処理はどうあるべきか、これは難しい課題で一律の解答はないと私は思います。人々によって営まれる生活は地域によって同じ点もあれば異なる点もあります。地域の状況にあった方法で進められるのが最も理にかなっているのではないか、 今回述べた2つの動向が大きな流れになるのはもう少し先のことだと思います。興味深く眺めることといたしましょう。

<もっと専門的に知りたい人は>
  1. 平成19年版環境循環型社会白書:http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h19/html/hj07030402.html#3_4_2_2
  2. 藤本輝男、安達弘幸:総合リサイクル事業の現状と課題-カンポリサイクルプラザの取組み、都市清掃、59(269)、pp.72-79、2006
  3. 武田信生:都市ごみ処理-今後の技術動向について-、都市清掃、59(272)、pp.21-26、2006
  4. 花木啓祐:ディスポーザーがもたらす下水道と廃棄物管理への影響、都市清掃、58(266)、pp.3-7、2005
関連研究 中核研究3
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