循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - その他
2011年2月7日号

スウェーデン・ルンド大学滞在記

田崎智宏

 2010年10月下旬より、スウェーデン・ルンド大学の国際産業環境経済研究所(International Institute for Industrial Environmental Economics、以下IIIEEといいます。)に約1年間、滞在させていただくこととなりました。こちらでの研究生活・大学生活についてご紹介します。

(写真上)IIIEEの建物入り口、(写真中)授業の一コマ:学生のポスター発表の様子、(写真下)スウェーデン・ルンド市内の資源ごみの分別ボックス(仕事柄思わず中身を覗いてしまいます。)

 ルンド大学は、創立1666年という由緒ある大学で、世界大学ランキングではスウェーデンの大学のなかで上位に入っています。スウェーデン最南端スコーネ地方にあり、隣国デンマークのコペンハーゲンの空港が最寄りの国際空港となります(電車で1時間足らず)。コペンハーゲンには欧州環境庁があり、IIIEEの研究者も関連する活動に関与・貢献しています。

 IIIEEは、非常に学際的な機関で、「産業」と「環境」というところに特色があります。既に紹介のあったイェール大学産業エコロジーセンター(2007年12月10日号「イェール大学産業エコロジーセンター滞在記(1)」参照)と比較すると、IIIEEの方がマネジメントや法制度により重点をおいているといえるでしょう。IIIEEには2つの修士コースがあり、教育にかなりの力をいれています。どちらも先ほど述べた「産業」と「環境」という特色を軸にしたもので、非常に学際的かつ実践的な内容となっています。例えば日本であれば、企業の環境マネジメントとしてISO14000シリーズを学ぶことが多いのでしょうが、こちらでは、実際に企業の方を10人ぐらいお招きして、企業の環境マネジメントの現状、業界の状況などを具体的に教えていただいたうえで、当該企業の環境計画を立案したり、中小企業の環境マネジメントをグループごとに議論したりしています。また、施設見学等のツアーを積極的に行いながら、机上ではない現場感覚をつかみ取り、学生は議論、グループワーク、発表を積み重ねていきます。事前に20〜30頁の資料を読まなければならないことも多く、テストも頻繁にあります。

 学生の皆さんは本当に精力的で、質問はたくさんでてきます。一度、社会に出てから戻ってきた学生も多いのも私にとっては意外でした。自分の強み・経験と問題意識をしっかり持っているとこんなにも違うものかと感嘆します。

 授業で一つ面白かったエピソードは、「先生、最初にそれを説明すべきだよ。」という発言に、先生は「質問がないか最初に聞いただろう。質問しないそちらが悪い。」と切り返していたことです。真摯に取り組まないと、真摯な答えも得られないということでしょう。

 自立的なところは、仕事のスタイルにも現れます。こちらに来て早々、こちらで受け入れてくださったリンクヴィスト先生と東條先生(拡大生産者責任(2007年10月15日号「生産者の責任」参照)の研究等で、世界の研究や国際機関の議論を引っ張っておられる方々です)に出勤簿がないことを教えていただきました。研究者は成果ってことですよね、と思いながら、達成する過程には自由度が与えられてことによる良さと厳しさの両方を感じました。

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