2007年12月10日号
イェール大学産業エコロジーセンター滞在記(1)橋本征二
10月下旬より、米イェール大学の産業エコロジーセンター(Center for Industrial Ecology)に1年間ほど滞在させていただくこととなりました。これから数回に分けて、こちらの様子をご報告させていただければと思います。今回は、私が滞在するセンターについてご紹介したいと思います。 産業エコロジーセンターは、イェール大学のあるコネチカット州ニューヘイブンのダウンタウンから少し丘をあがったところにあります。初めて訪れたとき、それが一軒家だったことに驚いたのですが、この地上3F地下1Fの建物は、かつては民家として使われていたそうです。 1つ1つの部屋はそれほど大きくないので、1部屋を1〜2人で使っています。学生もほとんど個室の状態ですが、皆さんドアは開け放しで仕事されています。ニューヘイブンは、1600年代初頭にヨーロッパ人が入植し、米国で初めて都市計画がなされた都市ともされており、古く立派な建物が多く残されています。 また、古い街だけあって、いくつか発祥の地とされるものもあるようです。例えば、初めてのハンバーガー店とされる古い店があったり、フリスビーが生まれた地ともいわれています。 さて、センターの名前にある産業エコロジーですが、これは、産業システムを、それを取り巻く自然環境の一部としてとらえ、物質の循環、つまり天然資源を掘り起こして製品を作り、使って捨てるまでを最適化しようとする研究分野です。 産業エコロジーセンターは、この分野の研究・教育・普及を促進することを目的として、1998年に設立されました。このセンターを率いているのが、今回お世話になるGraedel教授です。センターには、この分野の国際学会であるInternational Society for Industrial Ecology、 この分野の専門誌であるJournal of Industrial Ecologyの事務局があります。ちょうど私の部屋の向かいが、Lifset編集長の部屋になっています。 現在このセンターで進められているプロジェクトの一つがStocks and Flows Projectです。略してSTAFと呼んでいます。プロジェクトの中身はその名前のまま、モノの蓄積(ストック)と流れ(フロー)を明らかにしようとするものです。 現在このセンターが主に対象としているモノは金属で、これまでに銅、亜鉛、クロム、鉄などのストックとフローを世界レベルで推計してきています。現在私たちが使っているモノの使われ方を「世界」レベルで明らかにしようというのは、いかにもアメリカ的な感じがしませんか。 しかし、世界レベルでの情報が必要であることは明白です。近年、様々な金属の価格が高騰し※1、日本でも金属製品の泥棒に関するニュースがしばしば報道されています。さまざまな金属がどのように使われているのかを世界レベルで知ることは、金属供給の持続可能性を議論する上でも不可欠な情報となります。 また、地下から掘り出す資源が減るということは、これまでに掘り出してきた資源をいかにリサイクルして使っていくか、ということが重要になることを意味します。つまり、これまでに掘り出してきた資源がどこに蓄積されているのか、という情報が重要となってきます。 私はこちらでステンレス鋼のフローを追う研究に従事します。次回はその内容についてご報告したいと思います。
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