循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - その他
2006年11月5日号

研究報告「家電リサイクル法の実態効力の評価」

田崎智宏

 皆さんは、家電リサイクル法というものをご存じでしょうか。ブラウン管テレビ、洗濯機、冷蔵庫・冷凍庫、エアコンの四品目について、そのリサイクルを定めた法律で、2001年の4月にスタートしました。 これら四品目を捨てる人が2520〜4830円のリサイクル料金に加えて、収集料金として1000〜2000円程度を支払い、メーカーや販売店がそのお金を用いて収集・リサイクルをしっかり行うというのがその仕組みです。 現在、テレビについては主にブラウン管ガラス、その他の三品目については主に金属分がリサイクルされています。

 それでは、家電リサイクル法はうまくいっているのでしょうか。法律が定めたリサイクル率を十分に達成できているので、うまくいっているという人がいます。その一方で、捨てる人がお金を払わずに不法投棄をするのではないかと、 現在のリサイクル費用の支払い方式の問題点を指摘する人がいます。その他にも様々な意見があります。どちらが正しいのでしょうか。うまくいっているのか、そうでないのか。そうでなければ、法律のどこをどのように直したらよいのでしょうか。

家電リサイクル法の実態効力の評価 - 2006年3月刊行

 このような素朴な疑問に少しでも答えてみたいと思い、取り組んだ研究が「家電リサイクル法の実態効力の評価」です。家電リサイクル法の過去5年間の実態データを一つ一つ明らかにしたもので、その成果は、2006年3月に刊行された研究報告にまとめられています。 当研究所のホームページhttp://www.nies.go.jp/kanko/kenkyu/pdf/r-191-2006.pdfからダウンロードできますので、ぜひともご覧ください)。

 さて、本報告の詳細は別途ご覧いただくこととして、家電リサイクル法の実態実態を少しのぞいてみましょう。

 まず、家電リサイクル法がうまくいっている点です。メーカーに集められた廃家電のリサイクル率は、四つの品目ごとにそれぞれ66%、75%、77%、84%(2005年度実績)です。法律の目標は50%〜60%ですから、目標達成は十分といえます。加えて、 きめ細かなリサイクルもうまく進んでいます。例えば、テレビは外枠からブラウン管を取り外し、しかもそのブラウン管のガラスの正面部と側面部とを切断して、リサイクルがされています。ブラウン管には2種類のガラスが使われていますので、 それぞれの用途に再び利用しようというものです。また、法律ができたときはプラスチックのリサイクルは今後の課題とされていましたが、洗濯機の浴槽や冷蔵庫の野菜ボックスなどはメーカーがリサイクルして、再びプラスチックとして利用され始めています。 このようなリサイクルは「水平リサイクル」と呼ばれ、国際的にみても日本が進んでいるところの一つです。

 その一方で、行方が分からなくなっている廃家電があり、問題となっています。本研究成果によれば、家電リサイクル法ルートでの廃家電の回収の割合は約半数であり、残りの2割は国外へ、3割は産廃業者か資源回収業者によって再資源化や処理がされていることが推計されました。 こうしたルートに流れた廃家電の全てが確実にリサイクルされているとはいえないのが実状です。特に海外に流れたものはe-waste(電気電子機器廃棄物)と呼ばれ、途上国で中古品として利用されずに不適正な処理がされていないかと、国際的にも心配されています。 それでは、自分が使ったもの、自分の国で使ったものが確実にリサイクルされるためにはどうしたらよいでしょうか。廃家電を引き渡す際に家電リサイクル券をもらう場合はほぼ間違いなくリサイクルされますので、きちんと必要な額のリサイクル料金を支払い、リサイクル券をもらうようにしましょう。 一方で、世の中には廃家電を適正に引渡さない人や、適正に処理すると偽ってお金だけをもらい、いい加減な処理をする人もいますので、そのようなことが起こりにくい法律にすることも重要です。これまでの良い点を伸ばしつつも、悪い点を抑えることが今の家電リサイクル法に求められている課題です。

関連研究 中核研究1
HOME
表紙
近況
社会のうごき
循環・廃棄物のけんきゅう
ごみ研究の歴史
循環・廃棄物のまめ知識
当ててみよう!
その他
印刷のコツ
バックナンバー一覧
総集編
(独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
HOME環環 表紙バックナンバー
Copyright(C) National Institute for Environmental Studies. All Rights Reserved.
バックナンバー