循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のまめ知識
2007年11月5日号

基板と貴金属

滝上英孝

 基板は、電気電子機器製品に必ず組み込まれており機器全体を制御する、人間でいうと「頭脳」に相当するパーツです。板やフィルム状の電気を通さない絶縁体上に集積回路、抵抗器、コンデンサー等の電子部品を配置し、 それらを配線で接続した構造になっています。コンピューターのCPU(中央演算装置)も基板の一種といってよいでしょう。その基板には、金、銀、パラジウム、白金などの貴金属が高い割合で含まれています。ご存知のように、 金、銀、プラチナなどはそれを身につける人を美しく飾ってくれることは言うまでもありませんが、錆びることがなく、アレルギー反応を引き起こす可能性が非常に低いので、指輪や装飾品に安心して使われているわけです。 電気電子機器製品の大切な部分である基板に用いられている理由としても、宝飾品同様、その化学的安定性(酸やアルカリ、湿気や熱等による腐食に強い性質)があります。さらに、高い電気伝導性を有していることが挙げられます。 上述の貴金属はメッキ等の方法で基板表面に固定され、回路や配線部分として役割を果たしています。

 さて、天然の鉱山が「金鉱山」となるためには、鉱石1トンあたり0.5グラム以上の金を産出する必要があるそうなのですが、パソコンの基板1トンからはおよそ金140グラムが取り出せるので、パソコンは、堂々たる「都市鉱山」といえるでしょう。 国内で取り組まれている基板から貴金属を取り出す回収プロセスとしては、例えば次のようなものがあります。まず、基板をシュレッダーなどで粉々に破砕し、ふるい分けや磁力、比重による破砕物の選別を行います。 貴金属を含む破砕物はその後、精錬され(千数百度の高温で溶融され)、有機物や融点の異なる金属と貴金属が分離されます。貴金属は通常、銅などと共に回収された後、電気分解を経て貴金属別の地金(じがね、延べ棒のこと)になり、再利用されています。 一方、発展途上国では、貴金属や有価金属の回収のために、手作業で基板を加熱する、強酸を使うといった原始的な方法が用いられており、重金属類や有機物質による作業環境や周辺大気、水質の汚染が問題になっています。

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