循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のけんきゅう!
2007年2月5日号

コクサイシゲンジュンカン?

村上進亮

 2006年11月20日号に「ジュンカンガタシャカイってどんな社会?」という記事 がありました。「ジュンカンガタシャカイ」のイメージは出来ましたか? 今回は、「コクサイシゲンジュンカン」です。なんだか関係のありそうな言葉ですね? 国際+資源+循環です。

 まず、「国際」については日本を始めとした一つの国の中だけではなく、国境を越えて循環が起こるんだな、と分かっていただけると思います。何かの貿易の話ですね。

 では「資源」です。皆さんは「資源」と言われて何を思い出すでしょうか。石油ですか? それとも鉄? 広辞苑によれば資源とは「生産活動のもとになる物質・水力・労働力などの総称」という意味だそうです。そう言われれば「人的資源」などという言葉もありますね? 先ほどの石油や鉄といった資源は、物質資源、その中でも「化石燃料資源」「鉱物資源」などと呼ばれるものです。

 ではどんな資源が国際的に循環するのでしょう。最近話題になっている国際資源循環では使用済み製品やスクラップなどの中でまた何らかの形で再利用(再生利用)できる物の循環について語られることが多いようです。写真のようなものからも大切な資源が回収できます。

 最近では、エアコン、テレビといった家電製品やパソコンなどの使用済み製品、これを解体して得られる部品などが(E-wasteなどと呼ばれ)国際的に循環することについて問題になっています。こうしたE-wasteは、そのまま中古として利用する場合もありますし、部品を取り出して再利用することも、また、銅をはじめ、時には金のように高価な素材が回収されることもあります。

 国際資源循環について、何が起こっているのか、なぜ起こっているのかについて、私たちは研究を進めています。何が起こっているのかについては、貿易統計などの文献から得られる情報と、現地調査の結果をあわせて、その全体像を把握しようとしています。なぜ起こっているのかについては、どのような点に着目すればいいのか、そしてその評価のためにはどのような指標が必要なのか、について検討しています。その時のキーワードが「資源性」と「有害性」です。

 国際資源循環はそれが環境上正しく行われているのであれば、ある国の中では十分に再利用されない使用済み製品やスクラップが国境を越えることで再利用され、資源が有効に利用されるという意味で望ましいもののはずです。しかし、いったん輸出されると、それぞれの輸入国の中でこの「正しく」が保証されているかどうかを確認することは難しい問題です。部品や素材を取り出す工場で労働環境が守られているのか。また有用な資源を取り出した後の残り(残さ)は、正しく処理されているのか。 こうした「有害性」に関わる問題が良くクローズアップされます。また、中古製品として利用された場合に、使えなくなった後の処理は誰の責任になるのかといった問題もあります。

 また、私たちが注目して研究している点の一つに「資源性」という言葉があります。簡単に言えば、あるものが持つプラスの価値のようなものです。それは、各国の経済・社会事情により異なるため、輸出する国に比べて、輸入する国がその循環資源の資源性、つまり価値を高く評価する場合に貿易が起こるわけです(例えば日本ではもう中古品としての価値がないと考えられる自動車が、輸出先ではまだ中古製品として利用可能であると考えられるなど)。

 ところが、E-wasteのような循環資源の中には稀少金属(地球上に余り存在しないような金属)が含まれている場合が多くあります。しかし、このような金属を回収するためには非常に高度な技術力が必要で、すべての国で可能なわけではありません。技術の伴わない国に輸出してしまうと、実は貴重な物質を無駄に捨ててしまう可能性もあるわけです。

 循環型社会を構築する上で、循環資源の持つ「資源性」を最大限引き出すことは重要なことです。一方で、「有害性」が適正に管理されることが保証されない限りは、「資源性」を引き出すためだとしても、その循環は促進されるべきではないでしょう。

 現実には、より大きな国境を越えるような循環型社会へ向けて国際資源循環は動いています。わが国は天然資源に乏しい国として、また現在では循環資源を輸出することが多い国として考えるべき点が多く、これについては緊急の対応が必要な問題であるという指摘もあります。

 本当に望ましい国際的な規模での「循環」を手に入れるために何をすべきか。皆さんはどう思うでしょうか?

<もっと専門的に知りたい人は>
  1. 村上進亮ほか:マテリアルフローから見た循環型社会2)ーe-wasteの国際循環と資源性・有害性、エネルギー・資源、27(4)、pp.260-263、2006
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