活動レポート
2017年5月号

資源循環・廃棄物研究センター 2017年 春の一般公開

多田 容子

国立環境研究所では、広く一般の方々に環境問題に関心を持って頂くとともに、研究所の活動について理解を深めて頂くため、毎年2回、4月(科学技術週間)と7月に研究所の一般公開を行っています。

講演会「家で使って汚れた水はどこへ行く?(日本で、アジアで)」の様子2017年の春の一般公開(春の環境講座)は4月22日土曜日に開催されました。当日は小雨がぱらつく少し肌寒い気候ではありましたが、576名という多くの方々に来場頂きました。厚くお礼申し上げます。

今年の「春の環境講座」では、当センターは蛯江主任研究員が「家で使って汚れた水はどこへ行く?(日本で、アジアで)」とのタイトルでの講演会と、梶原主任研究員と松神研究員の「使用済み家電製品に含まれる新規POPsに関する研究」「デカBDE含有廃プラスチックの簡易判別技術の開発」の2枚のパネル展示を行いました。

講演会では午前の早い時間帯にもかかわらず、70名という多くの方にお越しいただき、ご用意した椅子が足らなくなるほどの盛況でした。私たちは普段毎日何気なく使っているトイレやお風呂、炊事、洗濯などの水について、使って汚れた水がどこへ行くか、またどのように処理されるのかについて考える機会がなかなかありません。そこで、排水処理について日本が作り上げてきた技術や制度についてご紹介した後に、気候や文化が違うアジアで日本がどのように貢献ができるかについてご紹介しました。家で水を使う(排水が発生する)タイミングが生活スタイルや宗教などによっても違うとのお話には、皆様一様にうなずかれていました。

パネル展示では、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約で新たに対象物質に追加されたデカブロモジフェニルエーテルについて、使用済み家電製品由来の廃プラスチックを対象とした研究成果をご紹介しました。

POPsには、環境中で分解しにくい、生物の体内に蓄積しやすい、生物や環境へ有害性がある、国境を越えて長距離を移動する、という特徴があります。そこで国際的な汚染防止の取組が必要となり、その製造や使用などを制限する条約が12物質を対象に2004年に発効しています。今春、臭素系難燃剤の一種であるデカブロモジフェニルエーテルが新たに条約対象物質となりました。この物質は、過去に家電製品のプラスチック筐体(テレビケースなど)等に添加されていたことがあるため、家電リサイクル施設で回収される使用済み製品の廃プラスチックからも検出されます。今回のパネルでは、デカブロモジフェニルエーテルが高濃度に含まれるプラスチック部材を混合破砕前に選別する必要があることをご紹介しました。そのためには、家電リサイクル施設の現場で含有製品を簡易に判別する技術の開発と実用化が求められていることから、フーリエ変換赤外分光分析装置を使った簡易判別の可能性についてご紹介しました。

次の一般公開は7月22日土曜日に予定されています。春の一般公開(春の環境講座)は主に高校生以上を対象として企画していますが、夏の一般公開(夏の大公開)は全年齢を対象とした様々な企画をご用意しています。夏休み最初の土曜日ということもあり、ぜひ、お子様から大人までみなさんでご来場ください。みなさんが分かりやすくかつ楽しんで頂けるような形で研究成果をご紹介したいと思います。

パネル展示の様子
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