循環・廃棄物の豆知識
2018年5月号

サーキュラーエコノミー:モノが円を描く経済

西嶋 大輔

「サーキュラー・エコノミー」(「循環経済」ともいいます。)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?サーキュラー・エコノミーは持続可能な社会の実現に向けて2015年12月に欧州(EU)で掲げられている、私たちの経済活動に関する発展的な概念です。これまでの私たちの経済活動では、自然界から資源やエネルギーを取り出し、それらを使って製品を生産・消費することで価値を産み出し、消費を終えた製品は自然界に廃棄されるというのが主な流れでした。こうした経済は、消費された資源をリサイクル・再利用することなく直線的に廃棄してしまうため、直線的(Linear)にモノが流れる経済(Economy)ということでリニア・エコノミー(Linear Economy)とも呼ばれます。リニア・エコノミーでは、自然界から取り出された資源やエネルギー、そしてそれらを用いて生産された製品が一度きりの「使い捨て」の形で消費されてしまいます。その結果として、既に私たちの社会では資源やエネルギーの不足、地球温暖化、廃棄物処理などの環境問題が現れており、そうした問題に立ち向かうためには、これまでのリニア・エコノミーの下での経済活動をより環境への 負荷が少ないものへと転換することが必要です。その一つとして、資源や製品を経済活動の様々な段階(生産・消費・廃棄など)で円を描くように循環(Circular)させることで、資源やエネルギーの消費、廃棄物の発生を少なくすると同時に、その循環の過程でも価値を産み出すことによって、経済成長と環境負荷の削減の両立を目指そうという経済(Economy)の概念が提案されており、これが最初に述べたサーキュラー・エコノミー(Circular Economy)です。日本でも似たような概念として、資源や製品の循環を通して環境への負荷を減らす「循環型社会」というものがありますが、「サーキュラー・エコノミー(循環経済)」では、環境への負荷を減らすだけでなく経済成長も同時に実現しようという点が「循環型社会」と異なる大きな特徴です。

サーキュラー・エコノミーへの転換に向けた方策は様々なものが挙げられていますが、その中で今すぐに私たちが取り組むことができるのが、製品寿命を長くする、言い換えると「モノをもっと長持ちさせる」ことです。製品が今よりも長持ちするようになると、修理やリユースなどを通して製品が経済の中を循環する機会が増えて廃棄されにくくなるため、廃棄物の処理やモノを新しく作るときに使われる資源やエネルギーの量を減らすことができます。いくつかの研究でも、製品寿命を長くするほうが環境への負荷が少ないことが示されています。その製品寿命を長くするための方策としては、製品自体の耐久性を上げることやもっと修理しやすい製品デザインにするといった生産者に関することが挙げられています。もちろんそうした生産者の技術も重要ですが、私たち消費者も製品寿命に大きな役割を果たしています。例えば、製品の廃棄や買い替えに関する私達消費者の心理や行動選択が製品寿命に与える影響が大きいことが知られています。また、私たちの普段のモノの使い方も製品寿命に影響を与えていると考えられます。モノを長持ちさせるようにするだけでも環境にやさしい行動となるので、これからはぜひモノを長持ちさせることを意識してみてはいかがでしょうか?

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