循環・廃棄物の豆知識
2016年6月号

最新のごみ処理施設

前背戸 智晴

イラストみなさんが可燃ごみ、不燃ごみ、缶、瓶、プラスチック等に分別して、決められた日にごみステーションに出したごみは、ごみ収集車が回収し、ごみ処理施設において可燃ごみは焼却処理され、缶、瓶、プラスチックなどはリサイクル処理が行われます。大きなごみ処理施設では焼却で発生した熱をボイラーで回収して蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電しています。国はさらなる低炭素社会実現のため、生ごみ等を分別してメタン発酵し、メタンガスとして高いエネルギー回収率をもつ施設や、従来よりも高い発電効率をもつ施設を整備する場合には、通常より高い交付金を設定して支援をしています。ごみ処理施設は昔のように単にごみを焼却して減容化処理するだけでなく、エネルギーの生産拠点にもなってきているのです。また、下水処理場では汚泥をメタン発酵して汚泥の減容化を図り、メタンガスを作っているところがあります。一部の自治体では下水処理場とごみ処理施設の連携を図り、生ごみを下水処理場に受入れて汚泥と一緒にメタン発酵させることでエネルギーの生産拡大と有効利用の実証を進めています。例えば、北海道の北広島下水処理センターでは2011年度より既に一般家庭の生ごみを受け入れて事業として処理を行っています。

災害発生時におけるごみ処理も重要です。災害時には通常発生するごみに加え多くの災害廃棄物が発生するため、ごみ処理が停滞するとごみの保管場所での悪臭や害虫の発生など衛生面での問題も発生します。先般発生した熊本地震でも多くの家屋が被害を受け、多くの災害廃棄物が発生しました。熊本県内には27か所のごみ焼却施設がありますが、4か所が地震の被害により稼働を停止しました。熊本市では2か所のごみ処理施設のうち処理能力の大きな方の施設が被害を受け稼働を停止したため、通常の半分以下しかごみが処理できない状況となりました。

国は廃棄物処理施設整備計画を作っており、平成25~29年の5ヵ年を計画期間とするものが最新となっています。その中で、災害対策を強化するため、地域の核となる廃棄物処理施設においては廃棄物処理システムとしての強靱性を確保し、特に焼却施設については大規模災害時にも稼動を確保することにより、電力供給や熱供給等の役割も期待できるとされ、そのような施設整備を支援しています。そして、防災拠点として堅牢な構造の建物で発電設備を有し災害時に自立運転可能とする施設が既に建設され始めています。例えば、蔵野クリーセンター(東京都武蔵野市)は市役所に隣接した住宅街にあり、災害時に近隣の市役所、総合体育館等に電気及び蒸気を供給するように計画され、また、一部施設の開放による一時避難者への対応も考慮されています。普段は迷惑施設とされがちなごみ処理施設ですが、ごみ処理施設が止まればごみが町にあふれ、みなさんも衛生的な通常の生活を送れなくなります。また、武蔵野クリーンセンターのように災害時にも稼働してごみ処理を継続できる施設が電気・熱等を近隣施設へ供給することで、災害復旧の円滑な推進や避難者へのサポートが可能となります。

ごみ処理施設は平日ですが予約すれば見学が可能です。まだ見学されたことがない方は、ご自身の住んでいる地域のごみ処理施設がどの様な施設で、どの様なごみ処理がされているのか、一度自分の目で見られてはいかがでしょうか。

図1図拡大
図1 武蔵野クリーンセンター熱供給システム概要
エバラ時報 (248), 19-23, 2015-07より引用
資源循環・廃棄物研究センター オンラインマガジン「環環」 資源循環・廃棄物研究センター HOMEへ戻る 国立環境研究所 HOMEへ戻る 近況 循環・廃棄物の基礎講座 循環・廃棄物のけんきゅう 循環・廃棄物の豆知識 けんきゅうの現場から 活動レポート 素朴な疑問Q&A特別企画 表紙 総集編 バックナンバー バックナンバー