残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)に指定された化学物質は、人々の健康や生態系に悪影響を与える可能性があります。そのため、POPsの製造や使用は国際的に原則禁止されています。しかし、平成24年の2月、印刷インキやプラスチックなどに使われていた一部の有機顔料(有機化合物を成分とする着色に用いる粉末)の中に、POPsの一つであるポリ塩化ビフェニル(PCB)が国際的な基準値(50 ppm)を超える含有量で混入していたことが判明しました。直ちに、50 ppmを超えていた有機顔料の製造、輸入および出荷は停止され、出荷物は回収されました。その後の調査によって、有機顔料を製造する過程でPCBがわずかに非意図的に合成されていたことが混入の原因と判明しました。
日用品の原料の製造者または輸入者には、製造の過程でPOPsを生成させない技術対策が求められます。しかし、有機顔料の事例のように、思いもよらないところでPOPsが非意図的に合成・混入していることがあるかもしれません。そのため、私たちの研究グループでは、日用品やその原料の中に隠れてPOPsが混入していないかどうかの研究・調査を行っています(2007年3月19日号「はかる」参照)。私たちは、図1に示すような一部屋を占拠してしまう程の大型の装置を、毎日、繊細な技術で微調整しながらPOPsを測定しています。日用品に隠れたPOPsによる環境影響を少なくすることを考えて、引き続き研究・調査を進めていくことが重要だと考えています。