土や循環資材(溶融スラグなど)を再利用したり、廃棄物を埋立処分する際には、その周辺の土壌や地下水の汚染を引き起こさないように、慎重に取り扱う必要があります。みなさんは、これらの土などから溶出する物質を評価するためにどのような試験が行われているかご存知ですか? 実施される試験は国によって異なり、バッチ試験という簡単な試験を使う国が多いですが、中にはカラム通水試験(カラム試験)というやや手間のかかる試験を使う国もあります。バッチ試験はあまり手間がかからないので日常的に実施する場合にはとても便利です。一方、カラム試験では筒状の容器(カラム)の中に試料を詰めて、水を通過させるので、バッチ試験よりも現場に近い試験であると言えます。また、バッチ試験と違って、水を流している間に溶出してくる物質の濃度の変化を観察できることも大きな特徴です。
カラム試験に使うカラムはアクリルやガラスでできた円筒で、内部の直径は5センチから10センチ、高さは20センチから30センチの場合が多いようです。カラムの下部に、ろ紙やガラスビーズなどの詰め物を入れ、その上に試料を少しずつ、何層かに分けて入れます。定められた方法によっては、道具を使って締め固める場合もあります。試料を入れた後にガラスビーズやろ紙を入れて、キャップします。下と上のキャップにはプラスチックのチューブをつなぎ、このカラムに純水や塩化カルシウムなどの溶媒をポンプなどを使って流し、通過してきた水を採取します。溶媒を流す方向は、主に制御がしやすいという理由から、下から上へ流す「上向流」の場合が多いようです(図-1)。カラムを通過してきた水(流出液)はプラスチック製やガラス製の容器に集めて、pH、電気伝導率、酸化還元電位、有害物質の濃度を測定します。これらのパラメータの変化を調べることにより、環境への影響を評価することができます。また、X線回折や、走査型電子顕微鏡などによって、試験を始める前の試料と終わった後の試料の中の有害物質の状態を比較することで、有害物質の溶出メカニズムを調べることができるのです。
バッチ試験とカラム試験を上手く組み合わせることによって、現場の環境をより適切に評価できるのではないかと考えられます。国際標準化機構(ISO)や欧州標準化機構(CEN)など、様々な団体がカラム試験方法を示しています。私たちは、これらの方法も参考にしながら、日本の環境に適した標準的なカラム試験方法をつくることを目指しています。