パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)は、2009年に残留性有機汚染物質(POPs)として追加登録された物質です。POPsは、難分解性、高蓄積性、有害性、長距離移動性の4つの特性をあわせ持っています。では、POPs はどのような物理化学的な性状(物理化学パラメータ)を持っているのでしょうか?環境中における振る舞いを理解するには、物理化学パラメータとして、蒸気圧、水への溶解度、オクタノール /水分配係数(ある物質がオクタノールと水と二相間で分配平衡に達した時の両相の濃度比で、疎水性あるいは脂質への溶解性を表す一つの指標)が必要になります。例えば、典型的なPOPsの例として、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-パラ-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD;ダイオキシン類の中で毒性が最も強い物質)の物理化学パラメータを表1に示します。蒸気圧および水への溶解度は低く、分配係数が高いことが見てとれます。PFOSについても表1に比較してみました。蒸気圧は低いですが、水への溶解度が桁違いに高いことが実測され、また、分配係数も桁違いに低いことが予想されています。同じPOPsでもどうしてこのような違いが生じるのでしょうか?それは、図1のように、PFOSがスルホン基というイオン化する部分を持っているためです。我々の研究でも、同じ物質がイオン化することにより桁違いに物理化学パラメータが変化することを報告しています。従来のPOPsはイオン化する部分が無く、似たような物理化学的性状を有していました。しかし、PFOSは全く違う物理化学的性状を持っていると言えます。PFOSのような性状を有する物質は、残留性が低く、蓄積性も低いと思われがちでしたが、POPsの性質を有する場合もあるので、今後はこのような物質についても注意を払う必要があると思われます。
<もっと専門的に知りたい人は>
- http://www.oecd.org/dataoecd/23/18/2382880.pdf
- http://www.env.go.jp/council/05hoken/y051-90/ref03.pdf
- Kuramochi et al., Environ. Toxicol. Chem., 27(12), pp. 2413-2418, 2008