2011年7月24日に地上アナログ放送が終了しました。これに伴い、ブラウン管テレビの不法投棄が増えているというニュースも目にするようになりました。
不要になったブラウン管テレビは、家電リサイクル法に基づいて適正な処分が求められていますが、ブラウン管のガラスがどのようにリサイクルされるかはご存じでしょうか。
ブラウン管ガラスは、家電リサイクル工場において、前面の透明なパネルガラスと、背面にあって鉛を含むファンネルガラスに分割した後、5cm角の小片(カレット)になるまで砕いて、ガラス表面の付着物を取り除き、精製カレットにします。日本ではブラウン管ガラスカレットが年間8万トン程度発生し、その大半はマレーシアのブラウン管製造工場へ輸出されています。しかし、新しいブラウン管テレビの需要は世界的に減少しているため、ブラウン管ガラスカレットを新しいブラウン管にリサイクルする水平リサイクルが困難になりつつあります。
では、水平リサイクル以外にリサイクルする方法はないのでしょうか?
日本やヨーロッパでは、非鉄金属の精錬技術を使って、金属回収する方法が一部で行われています。鉛を含むファンネルガラスを精錬工程に投入し、ガラス分と鉛を分離し、ガラス分を鉱(こう)滓(さい)(スラグ)として、鉛を金属鉛として回収していますが、この方法で処理可能な量は年間1万トン程度でしかありません。
精製したパネルガラスについては、グラスウールとして住宅用断熱材などにリサイクルする方法(年間2~2.5万トン程度)がありますが、グラスウール生産量のうちリサイクル原料の受け入れは85%を越えておりほぼ飽和状態にあるため、受入可能量の増加は見込めない状況にあります。タイル・陶器、発泡ガラス、ブロックレンガへの用途もありますが、有価性がなく、受け入れ可能量(それぞれ1000~2000t程度)も小さいという問題があります。セラミックス、路盤材・建材、セメント等の原料としての利用技術が現在開発されています。
しかし、発生したブラウン管ガラスをすべてリサイクルすることが難しい場合には、埋立処分を検討する必要があります。その際、鉛を含んだファンネルガラスをそのまま埋立処分した場合、鉛の溶出量が基準を上回る可能性があるため、不溶化処理やコンクリート固化などの鉛の溶出量を抑える技術的措置が必要と考えられます。
ブラウン管テレビを処分する際には、ブラウン管ガラスが適正にリサイクルまたは処分されるよう小売店または自治体(一部地域のみ)に回収を依頼するなど、消費者もブラウン管テレビの手放し方に注意しなければなりませんね。