現在、モノは国際的な取引によって地球的規模で動いており、消費されたモノはやがてごみとして排出されます。人間活動を将来にわたって続けていくための対策の1つに、ごみの資源としての循環利用があります。日本では、資源ごとに地域の特性を踏まえて、最適な規模で循環利用することを目指し、「地域循環圏」を構築していく取り組みが進められています。資源の地域循環では、経済・環境・社会面でさまざまな効果が期待されています。経済面の効果は、廃棄物処理費用削減、雇用創出、関連産業の発展などです。環境面の効果は、廃棄物の焼却・埋立の削減、天然資源消費の削減、環境負荷の削減などです。社会面の効果は、地域の人々の関係強化、地域の愛着・誇りの増加などです。さらに、総合的な効果として地域の活性化が期待されています。これらの効果を分析・確認し、さらに改善することが重要です。
資源の地域循環の効果を分析するためには、地域や資源の特性、そして循環利用の技術やシステムの詳しい情報を集めなければなりません。技術やシステムなどのある程度の情報は文献やウェブ情報を調べるだけでも集めることができますが、より正確に効果を分析するためには、実際に現地を訪れて、実態を調査してデータを集める必要があります。循環利用の現状が当初の計画通りではない場合もありますし、関係者をとりまく状況など、現地調査で聞きとらなければ得られない情報もあるからです。現地調査は、単に調査地に赴けばよいというわけではありません。事前に自治体や事業者に然るべき手順で連絡をとり了解を得る必要がありますし、何度も足を運んで調査研究の趣旨を説明し、納得と信頼を得て初めてアンケート実施や情報提供が可能になる場合も少なくありません。前述した社会面の効果で、人々の関係強化を挙げましたが、現地調査でもそれが重要となります。
例えば、千葉県香取市の事例では、農村地域での家畜ふん尿などの農業系バイオマスをメタン発酵し(図1参照)、発生した発酵液を農地に施用していますが、現地調査から、この農地は都市居住者に貸与され、農村地域での資源の循環利用と都市居住者の農業体験が組み合わされた複合事業であることが分かりました。
都市近郊地域では木質バイオマスの熱利用が行われていますが、岩手県紫波町の事例では、木質バイオマスをペレット化して家庭のストーブで利用するだけでなく、行政や民間の複合施設での大規模な熱利用や、町内の施設や学校などでの建材利用にかなりの割合で進められていることが現地調査から分かりました。
また、北海道標茶町の事例では、酪農地域での下水汚泥の堆肥化が実施されていますが、現地調査によって、下水汚泥は家畜ふん尿と混ぜられており、量や質の変動による影響が抑えられる可能性があることが分かりました。
このように、文献では情報が分野毎に記述されて更新されていない可能性がありますが、現地調査によって分野を横断した総合的で最新の情報を得ることができます。
地域循環のとりくみが各地で本格化するなか、実態を反映した効果の分析が求められており、現地調査の重要性も増しています。これまでの知識や経験を蓄積して、地域の状況別に適切な現地調査の方法論を編み出していくことが必要です。