けんきゅうの現場から
2012年1月号

仮置場に持ち込まれる災害廃棄物

遠藤 和人

災害廃棄物の量と仮置場

東日本大震災では、沿岸部を中心として津波による被害が甚大で、がれき類の災害廃棄物は岩手、宮城、福島を合わせて2,249万トンと推計されています。これに「津波堆積物」と呼ばれる海底から津波によって陸上に打ち上げられた土砂類が数千万トン程度加わります。

がれき類の仮置場設置数は3県で316か所、面積は全部で957ヘクタールになります(平成23年12月27日時点)。東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせた面積が約100ヘクタールですので、その9.5倍程度の面積が仮置場として使用されています。ただし、957ヘクタールの仮置場は十分な広さとはいえません。仮置場の面積すべてにがれき類を置ける訳ではなく、仮置場の敷地内では、トラックが通ったり、廃棄物を破砕したり、ふるいにかけたりするスペースが必要です。また、地域によって仮置場を確保できる面積が違っているため、がれき類の山の高さが5メートルを超えてしまい、蓄熱等によって発火する事例が多くなりました。

仮置場に入ってくるがれき類

仮置場は316か所ありますが、その仮置場に入ってくる災害廃棄物は様々なものがあります。がれき類がそのほとんどですが、津波によって壊れて混合状態になったがれき類や、半壊状態の家屋等を解体したがれき類などがあります。がれき類と一言でいっても、コンクリートくずや木材、プラスチック、思い出の品、自転車などがあります。特に、震災後の数か月間は、コンクリートや鉄筋の建物を壊すための機械が被災地になく、木造家屋のみがこわされている時期がありました。そのため、去年の秋くらいまでは、がれき類には木材が多く含まれていました。家屋から来た木材以外にも、防風林や街路樹などの木材も多く仮置場に入ってきました。また、地盤が大きく動いたことや、津波によって敷地の境界がよくわからなくなったこともあり、家屋等の基礎コンクリートは解体されずに今も残しています。どのような種類のがれき類が、どの程度の量、仮置場に搬入されるかは、阪神・淡路大震災の時などのデータを参考にして計算されましたが、基礎のコンクリートが解体されなかったことや、鉄筋コンクリート造りの建物を解体できなかったことから、コンクリートくずの仮置場への搬入量は予想以上に少ない結果となり、木材ばかりが目立つこととなりました。

津波によって混合状態となったがれき類は分別することが困難であったことや、がれきの撤去を急ぐあまり、平常時とは全く異なり、分別せずに解体工事が行われました。そのため、仮置場に搬入されるがれき類の多くは、未分別の混合状態として搬入され、仮置場に山積みにされてから、機械や人力によって選別される状態となりました。解体されたり、撤去されたりする廃棄物の中にはアスベスト等の有害なものなどがありますが、分別せずに混合状態で運んだため、それら有害物も仮置場で分別しなければならない事態となっています。混合状態で運ばれてきたがれき類を仮置場で分別するには限界がありますし、時間とお金もかかることになります。例えば、皆さんが町のごみ拾いをしたとします。ごみ拾いをするときに、どんな種類のごみでも同じ袋に入れて、全部集めてから分別するのと、ごみを拾うときに分別しながら袋に入れていくのでは、どちらが効率的か想像していただければ分かると思います。

もう一つ問題があります。混合状態のがれき類には、津波堆積物などの土砂がくっついており、平常時の分別や破砕処理では有効な資源化物になりません。淡水の洪水災害などであれば、この土砂は振動させたり、乾燥させたりすることで剥がれ落ちますが、津波(海水)が原因の今回の土砂は、粘着力があり、乾燥や振動ではがれき類から剥がれ落ちないことも処理を困難にしている原因の一つとなっています。海水浴後に体がベタベタするのと同じ現象です。この処理には、今後、様々な技術が投入されていくと想像しています。

災害廃棄物であっても分別の徹底を

復旧・復興の早期実現や、被災者の感情を考慮すれば、がれき類の迅速な撤去は必要なことといえます。ただ、その後の処理困難性を考え、その後に要する時間とお金を考えると、果たして正解であったのか疑問も残ります。平常時と同じとまではいかなくても、スピードを損なわずに災害時なりの分別解体や分別撤去の方法があったのではないかと思われます。岩手県釜石市では試行事業として分別解体や分別撤去の有効性を検討しました。結論を出すところまでに十分な結果を得られた訳ではありませんが、分別撤去や分別解体することにより、アスベスト等の有害物の分別が可能であること、資源化率が向上すること、思い出の品に対する管理が容易になること、仮置場での取り扱いが容易なことなどの利点があることがわかっています。解体時に人の手で有害物を分別→思い出の品も手で選別して保管→機械による解体→荒く分別して仮置場へ運搬しても災害廃棄物の処理全体に対する時間が長期化することはないと考えています。研究所としては、データ等でそれらを証明していき、時間的にもお金的にも適正な災害廃棄物処理の姿を追っていくことが必要な作業と考えています。

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