循環・廃棄物の豆知識
2017年11月号

リサイクル率の違い

田崎 智宏

いろいろなリサイクル率があるので注意

廃棄物分野でよく用いられる指標に「リサイクル率」があります。リサイクル率の大小で、リサイクルが進んでいるかどうかを判断するためです。しかしながら、リサイクル率にはいろいろなリサイクル率があり、値を比較するときなどには注意が必要です。

リサイクル率は、一般的に、次式で定義されます。

リサイクル率=リサイクルされたモノの量/廃棄物等の量

簡単な式ですが、分母と分子に何をとるかで値と表す意味に違いがでます。分母から確認してみましょう。まず、廃棄物等が何かによる違いです。例えば、EUでは4つの公式な定義があります。

  • (1) 缶・びん・ペットボトル等の主要な資源ごみ(家庭系)だけの場合
  • (2) その他の家庭系資源ごみ(例、生ごみ)を含む場合
  • (3) 家庭ごみ全体の場合(1と2には含まれていない「可燃ごみ」「不燃ごみ」を含みます。)
  • (4) 家庭ごみだけでなく事業系ごみを含む場合

この定義によってリサイクル率の値が数%から十数%異なります。また、どの段階での量を使うかによっても違いが生じます。主には、廃棄物等のi)発生量、ii)排出(搬出)した量、iii)リサイクル施設に入った量の違いです。しげる例えば、生ごみが発生したとしても、庭で堆肥化したり、ディスポーザーで処理して下水処理を行った場合には、家からごみステーションなどに排出(搬出)されません。このため、i)とii)に違いが出ます。

分子の違いも、リサイクル率に大きな影響を及ぼします。まず、リサイクルにサーマルリサイクルを含むかどうかです(電気や熱などとしてリサイクルすることで、EUでは「エネルギー回収」と呼びます)。それから、分母がi)とii)の場合は、リサイクルされた量ではなく、リサイクル施設に向かった量(私どもは「仕向け量」と呼んで区別しています。)が分子に用いられることもあります。リサイクル施設に入ったモノでも、異物やリサイクル不適物などが含まれるので、仕向け量で計算するとリサイクル率が大きくなります。また、リサイクルされた量の定義にも違いがあり、例えば、家電リサイクル法で用いているリサイクル率は「再商品化率」と呼ばれるもので、有価で売却できたモノしか計上しません。

リサイクル率では見えてこないもの

第一に、リサイクル率はあくまでも「重量」に着目した指標です。リサイクルの質については何も語りません。つまり、より価値の高いリサイクル製品が作られたかは表現しません。また、希少金属のように重量が小さくとも、資源として貴重なモノをみるには適した指標ではありません。

第二に、分子に計上したものを全て一律に扱ってしまいます。例えば、マテリアルリサイクルとエネルギー回収の区別、あるいは水平リサイクル(同種の製品にリサイクルする)とカスケードリサイクル(異なる製品にリサイクルする)の区別をして、いずれかの取り組みを優先させたい場合などは、これらをまとめて分子に入れた指標を使っても優先させたい取り組みが進展していることを把握できません。進めたい取り組みをふまえたうえで、ふさわしいリサイクル率を用いる必要があります。

リサイクル率は便利な指標であり、情報の受け手が混乱しないようできるだけ統一した指標とすることが望ましいのですが、一方で、政策や取り組みの目的を忘れてまで統一させるべきとは考えにくいです。誤解のされにくい表現を目指すことや、読み手がリサイクル率の意味をきちんと読み取ることも必要といえます。

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