循環・廃棄物の豆知識
2013年5月号

擬似反応式を用いた嫌気性処理におけるガス生成量の予測法

徐 開欽

循環・廃棄物のけんきゅう「嫌気性処理技術を用いた汚水の省エネルギー浄化」の記事では、嫌気性処理の反応を簡単な化学反応式の形で表現して、その原理を解説しました。このような式を使って、反応タンク内の物質の流れを簡易的に予測するのに役立つ、実用的な方法を紹介します。ここでは、先述の記事で紹介された(式1)を少し複雑にした次のような式を使います。

CaHbOcNd(原料) + (a - 0.25b - 0.5c + 1.75d)H2O → (0.5a + 0.125b - 0.25c - 0.375d)CH4 + (0.5a - 0.125b + 0.25c - 0.625d)CO2 + dNH4+ + dHCO3-  (式3)

ここで、a、b、c、dは原料の元素組成を分析することによって決定します。この式から、有機物の分解によって生成するメタン、二酸化炭素、アンモニア、重炭酸の量を予測することが可能です。この式(、生ごみ、汚泥など幾つかのケースに適用してみた結果、ほとんどの場合、メタン生成反応をよく表現できることが確認されています。既に判明している有機性廃棄物の元素組成を利用して、嫌気性分解によるガス生成量を試算した結果を表1にまとめました。このように嫌気性処理では、対象とする原料の種類によって、ガス生成量およびメタン濃度は異なることがわかります。

表1 有機性廃棄物の嫌気性分解における疑似反応式とガス生成量、メタン濃度の試算
原料 反応式 原料の乾燥重量1kgあたりガス生成量 (m3) メタン濃度
(%)
調理くず C17H29O10N + 6.5H2O → 9.25CH4 + 6.75CO2 + NH4+ + HCO3-
ここでa = 17、b = 29、c = 10、d = 1
0.881 57.8
生ごみ C46H73O31N + 14H2O → 24CH4 + 21CO2 + NH4+ + HCO3-
ここでa = 46、b = 73、c = 31、d = 1
0.888 53.3
乳牛排泄物 C22H31O11N + 10.5H2O → 11.75CH4 + 9.25CO2 + NH4+ + HCO3-
ここでa = 22、b = 31、c = 11、d = 1
0.970 56.0
下水汚泥 C10H19O3N + 5.5H2O → 6.25CH4 + 2.75CO2 + NH4+ + HCO3-
ここでa = 10、b = 19、c = 3、d = 1
1.003 69.4
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