循環・廃棄物の豆知識
2013年6月号

循環型社会形成推進基本計画の策定プロセス

多島 良

循環型社会形成推進基本計画(以下、循環基本計画)は、日本がどのような循環型社会をどのように目指していくかを定め、定期的な点検により進捗管理を行うための大切な計画です。このたび閣議決定された第三次循環基本計画は、国・自治体の予算編成や自治体のごみ処理計画の策定を通して、わたしたちの生活に広く影響します。そんな大切な計画は、どのように作られているのでしょうか?

中央環境審議会、循環型社会部会

イラスト

循環基本計画は、循環型社会形成推進基本法第15条において作成することが規定されています。ここには、「環境大臣は…中央環境審議会の意見を聴いて、循環型社会形成推進基本計画の案を作成し、…閣議の決定を求めなければならない」と書いてありますので、案を作成する責任は環境大臣にあり、実態として作成作業にあたるのは環境省職員、その際に参考となる意見を述べるのが中央環境審議会という整理になります。このため、この「中央環境審議会」が計画の中身に重要な影響を与えるといえます。

中央環境審議会とは、環境省の下に設置されている審議会であり、環境基本計画の策定の時や、その他環境に関わる重要事項について諮問に応じて調査審議し、環境大臣と関係する大臣に対して意見を述べる専門家の集まりです。循環基本計画は、この中の、特に廃棄物処理や3R推進に関連する議論を行うために設置された部会である「循環型社会部会」で議論されます。部会メンバーは、環境省によって選ばれた、廃棄物、生態学といった環境(工学)分野と、法学、経済学など社会科学分野等の学識者や、業界団体・NPO法人関係者を含む26名の委員で構成されています。議事内容は原則として公開され、環境省のホームページで、議事次第・資料・議事録を閲覧することができます。このように、異なる分野の専門家を交えたり、議論過程の透明性を高めたりすることで、中立的な議論を担保する工夫を取っているのです。

様々な主体の関与による計画策定

同部会は、これまで年間8回程度の頻度で開催され、その中で循環基本計画の点検や、計画の改定について議論されてきました。この過程で、部会メンバー以外の主体も様々な役割を果たしています。議論の材料となる基礎調査の実施や部会資料・議事録の作成などの部会運営事務は、部会の事務局(環境省の担当部局)が必要に応じて外部委託等も活用しつつ行います。また、必要に応じて関連事業者や自治体関係者が招かれ、先進的な取組や現状の課題について情報が提供されます。さらに、環境省内の関係部署との調整や、他省庁との調整も行われます。一般の国民が直接議論の場に参加する機会はありませんが、作成された計画案は公開され、広く国民の意見が集められます。これら意見を踏まえ、環境省で最終計画案が取りまとめられます。このように、学識者を含む委員の専門知識を活用しつつ、関係事業者や自治体から提供される情報・意見を勘案しながら計画が作られているのです。

計画が上手くいくためには、計画の中身はもちろんですが、計画策定プロセスを通して利害関係者が適切に関与できたかが重要であるといわれます。例えばEU諸国では、同様の計画を作る際に、関連行政部局、関係自治体、廃棄物専門家、廃棄物セクターの事業者、業界団体、消費者団体やNGOといった、幅広い利害関係者の参加が求められています。当研究所は、循環型社会を形成するためにどのような内容を計画に盛り込むかに関わる研究で貢献をしてきましたが、加えて、どのように計画を作ることが望ましいか、適切な計画策定プロセスの在り方についても研究を進めているところです。

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