循環・廃棄物の豆知識
2012年12月号

遮断型最終処分場

遠藤 和人

製品生産や工場などの事業活動から発生する廃棄物の多くは産業廃棄物と呼ばれています。産業廃棄物には20種類の品目が決められていて、その品目に一致するものは産業廃棄物になります。一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物として決められています。したがって、皆様の家庭から出るごみや、小売店、レストランなどから出るごみは一般廃棄物に分類されます。工場から排出されたとしても、品目に一致しなければ一般廃棄物です(例えば、食堂から排出される廃棄物など)。よって、「一般」と「産業」の違いは、廃棄物の品目であり、その性状や有害性(爆発性や感染性を含む)とは関係ありません。

さて、これら廃棄物を埋め立てる時はどうでしょうか。産業廃棄物のうち、安定五品目と呼ばれる廃プラスチック、ゴムくず、ガラス・金属くず、コンクリート・陶磁器くず、がれき類については、腐敗性が無く、汚濁水を発生させることが無い品目に分類され、安定型最終処分場と呼ばれる遮水設備の無い処分場に埋立処分されます。有害物質(重金属類)をある一定以上含む産業廃棄物(燃えがら、ばいじん、汚泥など)は、特別管理産業廃棄物の一つとして分類され、遮断型最終処分場と呼ばれる施設に埋め立てられます。安定型にも遮断型にも分類されない廃棄物は、管理型最終処分場と呼ばれる処分場に埋め立てられます。つまり、有害物質をある一定以上含まず、かつ、汚濁水を発生させない安定型の品目に分類されない廃棄物は、全て管理型最終処分場に埋め立てられることになります。このように、埋め立てる時は、有害性(汚濁性を含む)を考慮した分類で埋め立てることになっています。

「有害物質をある一定以上含む産業廃棄物」と書きましたが、これは、溶出試験 (水に廃棄物を入れて、どれだけの有害物質がしみ出てくるかの試験)を行って重金属類の量を評価し、その値が基準を超えている場合には遮断型最終処分場に埋め立てなければなりません。言い換えると、無害化やセメント固化、キレート処理等の不溶化処理によって、溶出試験を満足すれば管理型最終処分場に埋立処分することが可能であり、処理を行っても満足しなかった場合に遮断型最終処分場ということになります。有害物質を含む特別管理産業廃棄物を、何の処理もせずに直接埋め立てることはできませんので、少なくとも、何らかの無害化や不溶化処理を行って、管理型相当にするための努力をしなければなりません。また、遮断型であっても、PCB廃棄物、ダイオキシン類を含む廃棄物、感染性廃棄物、液状廃棄物、廃酸、廃アルカリを埋め立てることは禁止されています。

イラスト:もとこ

遮断型最終処分場は、屋根が付いており、雨水が入ってこない構造になっています。施設(廃棄物を入れる箱)は、内側に腐蝕防止加工が施された厚さ35cm以上の水密性の鉄筋コンクリート製の容器となっており、公共の水域や地下水と完全に遮断される構造になっています。水密性コンクリートとは、マンション等で使用されるコンクリートに比較して、水を極めて通しにくいように配合されたコンクリートのことをいいます。遮断型最終処分場は、我が国の最終処分場としては最も隔離性能が優れた処分場です。したがって、周辺環境と遮断する水密性鉄筋コンクリートの性能がとても重要となります。

我が国には、遮断型最終処分場は30施設程度しかなく、希少な施設となっています。管理型は、一般廃棄物最終処分場を含むと、約2,600施設程度あります。近年では、新しい遮断型最終処分場を整備せずに、無害化や不溶化等の処理によって管理型相当の廃棄物にまで改質する方向が主流となっています。これは、有害物質を埋め立てた遮断型最終処分場の維持管理を止めることが難しく、半永久的に管理しなければならないことが理由の一つとして挙げられます。

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