循環・廃棄物の基礎講座
2018年1月号

コレは廃棄物?~廃棄物該当性の考え方~

肴倉 宏史

有効利用される廃棄物はいつまでも廃棄物?

廃棄物を適正に取り扱うための様々なルールを定めたものが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)とその政省令です。例えば、廃棄物の収集・運搬や処理を委託する場合には、あらかじめ許可を受けた業者に依頼しなければなりません。また、廃棄物を処理するための施設の設置やその変更も、許可を受けてから行う必要があります。産業廃棄物であれば、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を発行して、所在を管理しながら運搬や処理を進めなければなりません。なぜ、廃棄物にはこのようなルールが必要なのでしょうか。廃棄物処理法は、「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」を目的としています。適正に処理されなかった廃棄物によって、水質汚濁や臭気・有害ガス発生など、過去に様々な問題が生じました。したがって、そのような恐れのある廃棄物は廃棄物処理法の管理下に置くべきであるという考え方が、廃棄物処理法にあると理解できます。

ところで、廃棄物を道路の路盤材や舗装材として有効利用することがありますが、道路が完成した後も、廃棄物として管理する必要があるのでしょうか? すなわち、完成した道路や盛土に使われた廃棄物は、廃棄物のままなのでしょうか。その答えは「いいえ」です。何故なら、廃棄物処理法の下で委託処理された廃棄物のうち、有効利用されないものは、必ず、最終処分しなければならないからです。すなわち、廃棄物を有効利用する際のいずれかの段階で、何らかの条件を満たすことにより、廃棄物は「非廃棄物」になり、前述の廃棄物処理法の制約から外れることができるのです。それでは、廃棄物は、どのような条件を満たせば非廃棄物になれるのでしょうか? わが国における廃棄物の判断基準を勉強してみましょう。

廃棄物かどうかは5つの判断要素を総合的に勘案する

日本では、まず、1970(昭和45)年制定の廃棄物処理法にて「廃棄物」が定義され、廃棄物か否かの判断は排出実態等から見て客観的に把握可能と通知されました。その後、1977(昭和52)年の通知改正により、「占有者の意志、その性状等を総合的に勘案すべき」とされ(「総合判断説」と呼ばれています)、1999(平成11)年の「おから事件」最高裁判例においても総合判断説が採用されました。総合判断説では占有者の意思と取引価値に重きが置かれ、有償取引される物は有価物であり、よって廃棄物ではないと判断されていました。

しかし、①占有者の「有価物である」との強い主張によって本来廃棄物と判断されるべき物が廃棄物ではないとされ、環境汚染をもたらす事例が発生したこと(豊島事件等)、②1989(平成元)年に制定されたバーゼル条約では有価物か否かを問わず、「処分がされ、処分が意図され又は国内法の規定により処分が義務付けられている物質又は物体」を廃棄物と定義したこと、さらには、③EUもこれに追随し有価物を含めた管理を進めていったこと等から、2000(平成12)年に制定された循環型社会形成推進基本法では、中古品や副産物をも包括した概念として「廃棄物等」が定義されました。そして2005(平成17)年の建設汚泥処理物に関する通知のほか、廃棄物該当性の判断に関する幾つかの通知が発出されました。特に、「行政処分の指針」(環廃産発第050325002号、改正平成25年3月29日環廃産発第130329111号)は、これまでの通知を踏まえ、総合判断説を詳述したものとなっています。

この「行政処分の指針」は、廃棄物とは「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったもの」としており、また、「廃棄物は、不要であるために占有者の自由な処理に任せるとぞんざいに扱われるおそれがあり、生活環境の保全上の支障を生じる可能性を常に有していることから、法による適切な管理下に置くことが必要である」と述べています。そして、「これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案」することとしています。これらの判断要素は、具体的には次のように記述されています。

  1. 物の性状:利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境の保全上の支障が発生するおそれのないものであること。実際の判断に当たっては、生活環境の保全に係る関連基準(例えば土壌の汚染に係る環境基準等)を満足すること、その性状についてJIS規格等の一般に認められている客観的な基準が存在する場合は、これに適合していること、十分な品質管理がなされていること等の確認が必要であること。
  2. 排出の状況:排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること。
  3. 通常の取扱い形態:製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと。
  4. 取引価値の有無:占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。
  5. 占有者の意思:客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思が認められること、又は放置若しくは処分の意思が認められないこと。(以下略)

ここで「エ 取引価値の有無」と「オ 占有者の意思」は、「豊島事件」のように、恣意性の入る余地が大きいことに留意する必要があります。特に有償譲渡については、「法の規制を免れるため、恣意的に有償譲渡を装う場合等も見られる」ことを、この指針は指摘しています。さらに、前述の①から③も勘案すれば、廃棄物該当性の判断では、有償譲渡ばかりに拘るべきではなく、利用価値があり、生活環境保全上問題が無く、確実に利用されることを重視した総合的な判断が大切と考えます。その意味では、この指針が示した、先の廃棄物の捉え方の一文「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったもの」は、例えば「占有者にとって不要となったもののうち、利用価値が無く、又は確実な利用に疑義があり、かつ、生活環境保全上の支障を生じる恐れがあるもの」のように示すと、より誤解が少なくなるのではないかと考えます。

運送費が販売価格を上回る場合は廃棄物?

しばしば、「運送費が販売価格を上回れば廃棄物である」という考え方を耳にすることがあります。しかし、国はこの考え方を必ずしも支持していないことをご存じでしょうか。すなわち、先の行政処分の指針の「エ 取引価値の有無」の解釈・判断方法について、国は、「規制改革実施計画」(平成25年6月14日閣議決定)において、「廃棄物の該当性判断における取引価値の解釈の明確化」を個別措置事項の一つに掲げ、以下の規制改革内容を示しています。

廃棄物の該当性判断については、現行の課長通知の定めにもかかわらず、「販売価格より運送費が上回ることのみにより、取引価値はなく廃棄物である」と解釈・判断する自治体があることから、そうしたことを防止し産業副産物の有効利用を促進するよう、「販売価格より運送費が上回ることのみにより、経済合理性がなく取引価値がないと判断するものではない」旨の文書を発出する。

この閣議決定を受けて、環境省は2013(平成25)年に、既に2005(平成5)年に出されていた「規制改革通知に関するQ&A集」に、次のQ&Aを加えました。もし運送費が販売価格を上回っていても、直ちに廃棄物とは判断せずに、先の5つの判断要素を総合的に勘案するべきであることがわかります。

Q11.有償で譲り受ける者が占有者となる時点以前についての廃棄物該当性はどうなるのか。例えば収集運搬については、輸送費が売却代金を上回っている場合には産業廃棄物の収集運搬と判断されるのか。

A. 取引価値を有すると判断するための基準として、本通知において示した「行政処分の指針」においては「客観的に見て当該取引に経済的合理性があること」としているが、販売価格より運送費が上回ることのみをもってただちに「経済的合理性がない」と判断するものではなく、「行政処分の指針」第1の4(2)①エに従い判断する必要がある。

なお、廃棄物該当性の判断については、法の規制の対象となる行為ごとに、その着手時点における客観的状況から、物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する必要があるものであり、引渡し側から譲り受ける者までの間の収集運搬についても、上述の総合的な判断が必要である。

産業活動の主たる目的によって副次的に生じる「副産物」は、使い道が見つからなければ、廃棄物として適正に処分しなければなりません。しかし、副産物を有効利用できれば、天然資源の採取量を減らすと同時に、貴重な空間資源である最終処分場の消費容量も減らすことができます。また、事業者にとっては、運送費が販売価格を上回っても、差し引きの金額が最終処分の費用を下回ってくれれば経済的に合理性があることになります。したがって、生活環境保全上の支障を生じないようにしっかりと管理しながら有効利用を進めることは、資源循環と経済活動のいずれについてもプラスの価値があるのです。

有効利用の信頼性を高めるために

廃棄物該当性の最終判断は、国ではなく、自治体によって行われます。そのため、有効利用に強い懸念を持つ自治体は、上述の考え方を参考にしつつも、より厳しい判断を行う場合もあり得ます。廃棄物や副産物の有効利用に対する自治体や市民側からの大きな懸念の一つは、ぞんざいに扱われた際の生活環境への支障にあると考えます。したがって、廃棄物や副産物を有効利用しようとする事業者は、そのような心配を与えずに、有効利用に対する社会的な信頼を少しでも高められるよう、自治体や市民に国の考え方を含めて丁寧に説明し了解を得て、その内容を着実に実施していく責任があると考えます。

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